約 2,287,763 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4873.html
自分の部屋に入るなり、俺は驚愕した。 髪を拭く手は止まり、口は開きっ放しになる。 全ての行動を停止した俺は目の前の光景をどこか夢のような心境で見ていた。 シャミセンがにゃあにゃあと青いバランスボールのようなものにまるで語りかけるように鳴いている。 俺の頭の中に走馬灯のように記憶が甦ってきた。 どこでもドア、タケコプター、四次元ポケット、ネズミ嫌いの耳なしネコ型ロボット。 思い出したように俺は口を開いた。 「お前、名前は?」 バランスボールは俺に視線を移して、化け物のような歯のない口をかぱっと開いた。 「僕ドラえもんです」 はるか昔、小学生のころの聞き慣れたダミ声。 そう、俺の目の前にはドラえもんがいた。 俺の部屋になぜドラえもんがいるかって? それは俺が聞きたい。 だが心当たりはある。そりゃこんなことやる奴なんて一人しかいないだろう。 涼宮ハルヒ。 そのはた迷惑なやつが今日発した一言が原因としか考えられない。 俺は今日の出来事を思い出していった。 …………。 ……。 。 じめじめとした空気がまとわりつき、シャミセンがしきりに顔を拭うようになって、俺は四季に数えられない不遇の季節の到来を知った。 まあ俺自身、梅雨は嫌いだから同情する気もないのだが。 その日も部室の扇風機だけではどうにもならない湿気の中でうだっていた。 朝比奈さんがついでくれた水出しのお茶が唯一の清涼さを醸し出してくれる。 こんなときに古泉とボードゲームをやる気なんて起こるはずもなく、間近に迫ったテスト勉強をやることにした。 しかし、始めてみると我ながら情けないことにものの十分もしない内に飽きてきた。 流石にみんなが見ている手前すぐにペンを置くわけにもいかない。 そんな訳で俺は勉強してる体裁を装って落書きを始める。 「それなんの絵描き歌でしたっけ?」 一人で詰めチェスをしていた古泉が手を止めて尋ねてきた。 なんだ。声出してたのか、俺。 ええ、と古泉が微苦笑を浮かべて肯定する。 バレては仕方がないので、 「ドラえもんのだよ。ほら、昔やってただろ」 「そう言えばそんなものもありましたね。ちょっと、見せて下さいよ」 古泉がそう言って俺のプリントをのぞき込もうとしたとき、唯一ここにいなかったやつが現れた。 「古泉君、勉強教えてやってるの?」 入るなりハルヒはそう言ってずかずかと近寄り、古泉がなんと言おうか逡巡している内に俺のプリントを強奪する。 「なにこれ。落書きばっかりじゃない。それにこの歪んだ風船に竹串さしたようなのはなんなの?」 お前はドラえもんを知らんのか。 「これがドラえもんだったら、世の中にある丸いものは全てドラえもんだわ」 ハルヒは見てなさいとばかりに、ホワイトボードにさらさらと書き出した。 「お上手ですね」 古泉がハルヒ作の絵におべんちゃらを言う。 たしかに俺のドラム缶を何十回か殴打して毛を生やしたような落書きとは比べるのも憚られる出来栄えだ。 「こんな落書き、ドラえもんに対する冒涜だわ」 意外にもハルヒは怒った風に言った。 お前ドラえもん好きなのか。 「そうよ。昔はよく見てたわ」 たしかに、ハルヒ的にはいいかも知れん。不思議道具が山程あるしな。 「どっかにいないかしらね。ドラえもんみたいな未来から来たロボット」 未来枠は朝比奈さんだけで十分だ。藤原とかいう陰険野郎も、そんなロボットもいらん。 「もしかしたらいるかも知れませんよ」 と、古泉がハルヒをたきつけた。 いらんことを言うな。ほら、朝比奈さんが青い顔してるじゃねえか。 そんな思いを込めて、古泉の足を踏み付ける。 「絶対いるわよ。タイムマシーンの故障かなんかで」 ハルヒはそう言って遠くを見るような目でホワイトボードを見つめた。 バタバタと階段を登る音が聞こえて、俺は回想から現在時間へと戻った。 十中八九、妹だ。 「えっと、とりあえず姿を隠せ。急げ。話は後だ」 ドラえもんはやにわにポケットに手を突っ込んで、灰色のボールを半分に斬ったようなやつを取り出して無理矢理かぶった。 「シャミー」 妹がそう言いながらドアを開けたのと、ドラえもんの姿が忽然と消えたのがほぼ同時だった。 俺はほっと胸をなで下ろす。 「キョン君、タオル。お母さんが持ってきなさいって」 「ああ。分かった」 半乾きの髪を拭いてタオルを妹に手渡す。 妹はそのタオルでシャミセンを捕らえると部屋を出ていった。 足音が十分に遠ざかってから、 「おい。もう出てきていいぞ」 そう言うと再びドラえもんの姿が現れた。 ええっと、この道具はなんて名前だったかな。 「石ころ帽子~」 一々フシをつけて言わんでもいい。たしか存在感をなくすとかそんな道具だったはずだ。 ということは、 「やっぱり、本物なのか?」 ドラえもんは不思議そうに首を捻るというか身体を傾けた。 ますます本物じみた動作だ。 つうかお前はアニメのキャラクターのはずだろ。 「そんな訳ないだろ」 たしかに今はZ軸を持っているが……よく分からんが、なんでこんなとこに来たんだよ。 「タイムマシーンに乗って未来へ行ってたら、時空震に巻き込まれたんだ」 タイムマシーンまであるのか。どこだ? そう言うと、ドラえもんは俺の机の引き出しを示した。 引き出しを引くと数メートルほど下に、畳一畳ほどの板切れが浮かんでいる。 俺の部屋まで異空間にしてんじゃねえよ。自分の部屋くらい普通の空間でゆっくりさせろ。 「だったらコレに乗って帰ればいいだろ。それとも故障か?」 そうだとしたら頼りになりそうな人物を一名いや、二名ほど知っている。 「さっきまでメンテナンスしたけど故障じゃない」 と、ドラえもんは首もないのに頭を左右へ振って、 「この時空トンネルの時空座標自体が明らかに異なるんだ。」 全くもって意味が分からん。 ここでぐだぐだと話を聞いても理解できる気もないので、俺はこんなときこそ頼りになりそうな人物の元に行くことにした。 そして、俺の目の前にはドラえもんがいる。これを利用しないのはマッチがあるのにわざわざ棒と板切れで火を起こすようなものだ。 「どこでもドアを出してくれ。未来人のところに案内してやるから」 「どこでもドア~」 俺の知る限りの物理法則を全て無視して、ポケットから赤色のドアが出現した。 たしか行きたい所を思い浮かべるんだよな。 俺は目を閉じて朝比奈さんの可憐な顔を頭に浮かべながら、ドアを開いた。 「ひぇ!?」 どうやら成功したらしい。まあ、そりゃ驚くだろうな。 そう思いながら目を開くと、 「キョ、キョン君? 出てって! 見ちゃだめえ」 湯船につかって豊満なバディを隠すように手で隠したすっ裸の朝比奈さんがそこに居られた。 こんな古典を忘れていたとはな。 俺は回れ右で自室へと戻った。 朝比奈さんは風呂から上がったら電話してくるだろうからしばし待つことにする。 待つほどもなく、俺の携帯に着信があった。 『キョン君、あ、あれはどういうことなんですか?』 「今から会って説明します。もう大丈夫ですか?」 『ふぇ? ええ』 俺は電話を持ったまま、再び赤色のドアを開けた。 『「ひぇ!」』 目の前と電話から朝比奈さんの声が聞こえる。 今度は浴室ではなく、ファンシーな少女趣味を体現したような部屋で、湯上りの朝比奈はウィニフレッドと名乗る黄色いクマのパジャマに着替えておいでだった。 俺は終話ボタンを押して電話を切ると、ドラえもんを前に促した。 「キョン君。なんで禁則事項を……それにそれはなんなんですか」 禁則事項とはどこでもドアのことだろう。 朝比奈さんはキテレツな生き物を前にして今にも泣き出しそうだ。 なんて説明すべきだろうか。 「ええっと、こいつは未来からきたロボットです。それがやりました」 俺はさり気なく自己弁護も入れた。 「未来? ロボット? その雪ダルマがですか?」 「雪ダルマじゃない! 僕は二十二世紀から来たネコ型ロボット、ドラえもんだ」 怒鳴るなよ。ほら朝比奈さんがびっくりしてるじゃねえか。 「二十二世紀……それはほんとうですか?」 「ほんとうだとも」 「あり得ません。二十二世紀にはまだ、人工知能を有したロボットが航時機を使った記録も禁則事項を行なった記録もないんですから」 「そんな訳あるか!」 議論が平行線を辿りそうなので、俺は仲裁に入った。 こういうときには下手に片方を弁護するのではなく、証拠を提示するに限る。 「朝比奈さん、ちょっと俺の部屋に来てくれませんか」 可愛い顔でドラえもんと睨めっこをしていた朝比奈さんはえっ、という表情をしたが、 「……分かりました。着替えますから、出てて下さい」 外に出る訳じゃありませんから、そのままで大丈夫だと思いますよ。 「それで行くんですか?」 不安げに赤色のドアを指差す。 「大丈夫ですから、ついてきて下さい」 俺はそう言って、自室を思い浮かべてドアを開けた。 その向こうには俺の少しばかり散らかった部屋が広がる。 少しは片付けとけばよかったな。 「ふぇ、なんで禁則事項が禁則事項するの? 禁則事項なのに……」 黒人ラッパー並に禁則事項が入っているが、放送禁止用語みたいなものだろうか。 俺は異空間と化した机の引き出しを指し示して、 「あの中を覗いて下さい」 朝比奈さんは恐る恐る机の中を覗く。 そう言えば朝比奈さんが俺の部屋に来たのは初めてじゃなかろうか。それもパジャマ姿で。 引き出しの異空間は早急にどうにかすべきだが、これはこのままでいいな。 「うそっ! なんでこんな空間が?」 引き出しの中からエコーのかかった朝比奈さんの声が漏れる。 そんなにやばい空間なんだろうか。 朝比奈さんがげっそりとした顔で頭を上げた。 「……これはTPDDじゃないです」 それもそのはず。これはタイムマシーンだ。あんな気分の悪くなるタイムスリップはしない。 「どうしてこんな……もしかして」 朝比奈さんはそう言うと、自分の部屋に駆け戻った。 「交信要請! 交信要請! ふぇえ、お願いだから誰か出て」 朝比奈さんの部屋から必死にどこかと交信を試みる声が聞こえる。 お相手は朝比奈さんの所属する未来人の組合かなんかだろう。 「どうしたの?」 とドラえもん。 それはこっちが聞きたい。 しばらくして、吹けば倒れるんじゃないかと思えるほど弱りきった朝比奈さんが、泣きながら戻ってきた。 「……ふぇ……ぐすっ」 「朝比奈さん、どうしたんですか?」 「キョン君……あたしの未来……がなくなっちゃいました」 どういうことだ。未来がなくなった? 朝比奈さんはうえーんと号泣し始めた。 ともかく、夜半に知らぬ間に連れ込んだ女の子が号泣していたんでは両親に勘違いをされかねん。 俺は朝比奈さんを引っ張ってファンシーな部屋へと戻った。 「未来がなくなったってどういうことですか?」 号泣する朝比奈さんをベッドに座らせて尋ねた。 しかし、返答の代わりにはひぐっだの、ふぇだのいう泣き声しか帰ってこない。 「翻訳コンニャクだそうか?」 うるさい、黙れ。俺はお前の道具をチョイスする才能には一切の信用を置いてない。 五分ほどそうしている内に朝比奈さんはやっと顔を上げた。 泣きはらした目が真っ赤に充血している。 「……キョン君……あたしのこと面倒みてくれますか」 俺はもちろんです、と即答してから、 「一体、どうなったんですか?」 「……あたしの存在する時間が書き替えられたんです」 つまり、朝比奈さんの未来が消えたんですか? そう言うと朝比奈さんはふぇーんと再び泣き出した。 肯定の意味だ。 「ひぐっ……ふぇ……すぅ……すぅ」 しばらくすると寝息が混じりだして朝比奈さんは静かになった。 泣き疲れたんだろうか。 その予想は、がちゃりと開いた朝比奈さんの部屋にあるドアから出てきた人物によってあっさりと覆された。 「やっぱり、こうなっちゃいましたか」 布団に頭を突っ込んで寝息を立てる朝比奈さんをさらに豊かにした感じの朝比奈さん(大)が、呟くように言った。 この人はいつも唐突に現れて、謎の発言を残していく。 そうなる前にいくつか尋ねねばならん。 俺は挨拶も抜きに、 「こいつはアニメのキャラクターじゃないんですか?」 「この次元ではそうかも知れないけど、わたし達の次元とは源流のまったくことなる別の次元ではたしかに存在するの」 朝比奈さんはそう言ってドラえもんの頭をなでた。 よく分からんが、そういうことなのだろう。 しかし、 「未来が消えたってどういうことなんですか?」 「このドラえもん君の存在が未来を変えちゃったの」 「僕?」 ドラえもんが驚いたように顔を上げる。 「そうあなたの技術は巡り巡ってTPDDではなく時空トンネルという形で航時機を開発させるの」 だったらあなたはなんで存在するんですか。 「未来は一つじゃないの。沢山の平面時間が連なって、それは微妙なズレをもって広がるのよ。それを正しい方向に導くのが私たちの役目。でも、本来ならこんな大きなズレはあり得ないんだけどね」 だけど、もう未来は変わってしまったんじゃ。 「いいえ。まだ確定はしてないわ」 俺はえっ、と目を上げた。 朝比奈さん(大)の懇願するような顔が間近に迫る。 「わたし達の未来もこのドラえもん君が元いた場所に帰れるかも、みんなあなたを含めたSOS団のメンバーにかかっているの」 俺達にかかってるってどうすればいいんですか? 「わたしには言えない。だから、みんなで考えて」 ふざけるなと口まででかかった言葉が、朝比奈さん(大)によって塞がれた。 神経が断裂したかのように俺の身体が硬直する。 朝比奈さん(大)はやたら柔らかい唇を俺から離すと、 「これは前報酬よ。ついでにわたしの裸を見たこともね」 冗談のように言った朝比奈さん(大)だが、目だけは真剣だった。 「ちゃんと未来が正しい方向に戻ったときは、そこのわたしからお礼を貰ってね。あっ、でもわたしのことは内緒にしておいて下さい。じゃあ」 そう言って、朝比奈さん(大)は部屋から出ていった。 俺は白昼夢でも見たような気分でそれを見送ったが、やけに生々しい感触が残った唇が夢ではないことを証明している。 ふとドラえもんを見やると眼球の黒目にあたる部分がピンク色のハートに変わっていた。 リアリティにかけるやつだなと溜め息が出ると共に、やらねばならんことがぼんやりと見えてきた。 「ドラえもん、聞いたか?」 「うん、納得した。通りでタイムマシーンが使えないはずだ」 その目をゆっくりと黒目に戻して、 「僕に協力できることならなんでもやるよ」 と力強く言った。 朝比奈さん(大)の言葉を信じるならば、未来は俺たちにかかっているらしい。 何をすればいいのかも見当もつかないが、まずは足りないメンバーを集めねばならんな。 俺は赤色の扉のノブに手をかけて、ニヤけた野郎の面を思い浮かべた。 「うわっ」 がちゃりと開いた扉の向こうでそんな声が聞こえた。 よう古ず……お前もかよ。 湯煙の中、全裸で驚愕の表情を浮かべる古泉の姿がそこにあった。 サービスにも糞にもならんな。 「……これはどういうことですか?」 いいから前を隠せ。 「これは失敬しました」 と言って古泉は湯船に身体を沈めた。 「できるだけ早く用意してくれ。理由はあとで話す」 見たくもない光景に背を向け、朝比奈さんの部屋に戻る。 余程急いだのかものの数分で、服を着た古泉がやってきた。 「これはなんですか? 僕は夢でも見てるんでしょうか」 その視線は当然の如く、どこでもドアと鎮座するドラえもんに向けられる。 「長門も連れてきてからまとめて話す」 納得しかねるといった表情を浮かべる古泉を無視して、俺は無表情の長門の顔を思い出した。 今度は慎重にドアを開くと湯煙は流れて来なかった。 その代わりに開いた隙間からにゅるりと白蛇のような腕が伸びてきて、俺の胸倉を掴んだ。 俺は恐るべき力でドアの向こうへ引きずり込まれて、床へと叩きつけられた。 「おい、長門。俺だ」 無表情で胸倉を掴む長門の手が呆気なく離される。 思い切り床に投げられた痛みが遅れたようにやってきてしばしの悶絶を味わった。 そんな俺に長門が無表情になにか高速で呟くと下手したら骨にヒビくらい入ってそうな痛みが引いていく。 便利な能力だなまったく。 「いきなり空間の凝縮が始まり別の空間と相似したので敵対行動が行われるかと推測した」 制服姿の長門は、そう呟いた。 俺の推測により言い換えるならば、「いきなりワープしてきたから敵かと思って攻撃した。ごめんなさい」だろう。 最後のは推測でもなんでもないが。 これで団長以外のメンバーが揃った。 「…………っと言う訳なんだ」 俺は慎重に言葉を選びながら語り終えた。 言いつけ通り朝比奈さんには朝比奈さん(大)のことは内緒にして、俺の推測ということにした。 「たしかに……そうみたいですね」 と朝比奈さんも納得したようだ。 「ですが、一つ不明な点があります。なぜ、彼はここに来てしまったんでしょう」 彼とはつまり、長門から貰ったどら焼きを頬張るドラえもんのことだ。 「涼宮ハルヒの書いた絵が原因と思われる」 ずっと黙って話しを聞いていた長門が口を開いた。 絵ってのは、今日ハルヒが書いた落書きのことか? 「そう」 「どういうことですか?」 「涼宮ハルヒが書いた絵が空間力場を変質させ、それが時空的な波長と近似していたために、時空的な歪みが生じ、その波が異時空空間を広がり異時空空間にも歪みが生まれた」 なんのこっちゃ。 「つまり、涼宮さんの書いた絵がバタフライ効果のように働いたということですか?」 バタフライ効果ってのはなんだ? 「ブラジルで蝶が羽ばたけばテキサスで竜巻が起こるか、というカオス理論からきた言葉です」 ふーんと聞いていると、 「あの時点で分かっていれば防げたこと。迂闊」 風が吹けばネズミが増えるなんて思いつく奴なんかいないだろ。 「しかし、流石涼宮さんといった所ですね。理由はともかく結果的に実現させてしまうんですから」 と、古泉がここに唯一いない団長の名前を出した。 ハルヒがいたら話しがややこしくなるから呼ばなかったんだが。 はてさて、どうしたもんかね。 「ここは一つタイムマシーンを見て見ませんか? なにか掴めるかも知れませんよ」 タイムトラベル願望のある古泉がそう提案した。 こいつはただ見たいだけかも知らんが、たしかに闇雲にここで考えるよりもいいかも知れんな。 そういうことで、ハルヒを除くSOS団団員は俺の部屋に行った。 いやはや、ほんとにどこでもドアは便利だ。 「そうですね。一家に一台欲しい所です。で、問題のタイムマシーンはどこにあるんですか?」 と急かす古泉に、机の引き出してやると、 「これがタイムマシーンですか」 不思議空間に頭を突っ込んで楽しそうな声をあげた。 なんでこいつはここまで緊張感がないんだ。このまま後ろから突き落してやろうかな。 と考えている内に、ふと思いついた。 「長門、この空間をどうにかしてドラえもん戻せないか?」 「できなくはない」 おお。じゃ、やってくれ。 「ただ、この空間を異時空空間に戻す際に莫大なエネルギーが放出される」 「どのくらいでしょう?」 と、不思議空間から俺に突き落とされることなく生還した古泉が尋ねた。 「宇宙の初期化が行われるレベル」 「ビッグバンですか?」 「そう」 ビッグバンって宇宙レベルかよ。 そんな物騒な案は即刻破棄するとして、どうすればいいんだろう。 朝比奈さん(大)の言葉を思い出す。『未来はSOS団にかかっている』か。 そんなたいそうなことを言われても、SOS団とは“世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団”だしな。 目的は強いて言えば…………。 ああ、なるほど。こういうことか。 未来から来てるし、それに結局その未来も異次元らしいし、ロボットだし、不思議道具もあほみたいに持ってるし。 たしかにこいつなら適任だ。 俺はハルヒがいつか言った言葉を思い出した。 『宇宙人や未来人、超能力者を探し出して、一緒に遊ぶことよ』 ハルヒは隣りでいつも遊んでいるやつらこそが宇宙人や未来人、超能力だということを知らない。 ここは一つ、我らが団員の夢を叶えてやらねばならんようだ。 文字通り夢は夢として。 俺はそれが少しばかり面倒だが、正直にいうと胸が踊った。 断言できる。こんなチャンスはもう二度とこない。 これがまさかあんなことになろうとは、それこそ夢にも思わなかった。 つづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3508.html
夏休みも終盤に差し掛かり、当然のことに宿題がまだ終わっていない俺は焦っていた。 去年もそうだったから、それを察することはハルヒにも容易にできたのだろう。そう、今俺はハルヒの家で宿題を手伝ってもらっている。 「お前が俺ん家に来いよ」という俺の願望的提案も「いやよ、暑いし」というハルヒの一喝によって一掃されてしまった。 宿題をやり出して二時間、よくぞ俺もここまで集中力が切れていないな、と自分に感心している俺はハルヒの部屋のテーブルで黙々と宿題をしている。 そして三十分前から部屋の片隅のベッドで可愛い寝息をたてて寝ているハルヒが、ちょっとばかし今の俺の癒しアイテムとなっている。 ま、今の俺の状況説明はこんなもんでいいかな。 宿題が飽きてきたところで気晴らしにでも思って、ハルヒの部屋の押入れらしき襖を開けてみた。そこ、最低とか言うんじゃない。 その中のダンボールから出てきた何枚かの作文用紙……なるほど、こりゃハルヒの昔の作文だな。つまらないとか言ってた割には、こういう物を取っておいてるのかよ。 「何々……? 『しょうらいの夢』二年一組、すずみやはるひ……可愛い文字だな。」 しょうらいの夢 二年 一組 すずみや はるひ あたしは、しょうらいすてきなおよめさんになりたい……なんてことは、ぜったい言わない。 恋なんて、いっしゅんの気のまよいであって、何かのびょうきの一種なのよ。 あたしの夢は、ずっと楽しく生きて、一生を終えること。それが、あたしの夢。 ……終わりかよっ! 随分短い作文だな……しかもなんだ、この小学二年生に有るまじきこの可愛くなさ。 まあこいつらしいと言えば、こいつらしいけどな。次見てみるか。 最近のこと 一年 一組 涼宮 ハルヒ この前、あたしは学校のグラウンドに宇宙人へのメッセージを書いた。すごい時間がかかっ たのよ?とてもあたし一人でなんかできなかったわ。でも、そんなあたしの元に一人の変態が 来たの。なんか、女の子一人背負った高校生みたいな奴だったわ。どこかの誘拐犯かもしれな いわね。でも、その変態はあたしのメッセージ書きを手伝ってくれたのよ。この世にはおかし な奴も居たものね。 中学一年の時の作文か……作文の短さも内容も全く進歩していない。しかもこの変態って……いや、やめておこう。 先生も呆れていたんだな。元から諦めていたに違いない。 さて次の作文で最後か。どれどれ? これは……高校一年のものか。 恋 一年 五組 涼宮 ハルヒ 恋。それはあたしにとって、一生無縁なことだと思っていた。でも、それは…もしかしたら 違うのかもしれない。いや、別に今あたしが恋をしてるわけじゃない。というか、元々恋とい うものはどんなものなのか、よく分からなかったりする。 今年の春。あたしは、ある男と出会っ ……ここまでが俺が読み取れた範囲である。何故これ以上読めなかったのかって? 文字が汚かったわけでも、紙が破れていたわけでもない。 ハルヒの制止によって、俺の行為は妨げられたからである。 「何してんの? …って、あっ、それ!!」 一気に作文を全て取り上げられた。まずい、怒らせちまったかな? 「こ、このバカキョン!! これ、最後まで読んだの!?」 「いや、途中までしか…」 ハルヒは動揺していた。何故顔が真っ赤なんだい? 団長さん。 「途中までって、何処よ!!」 「…さあな、忘れちまった。」 「勝手に人の作文見るなんて最低っ! 今すぐ出てけーっ!!」 ハルヒは走るチーターのスピードの如く俺を追い出した。そんなに嫌だったのか? …そうか、そうだよなぁ。 少し反省しつつ、俺は家に帰っていった。新学期、謝っておくか。 一方、ハルヒの部屋 「作文の最後の文章……『あたしがこの男に抱いている感情こそが、恋なのかもしれないわ。』……こんなの見せられるわけないじゃない! なんでこんなの書いたのかしら……自分が自分を許せないわよ、もうっ!」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1800.html
(これは涼宮ハルヒの憂鬱を 格闘ゲーム化したら どんなふうになるのかを 予想したもの・・。) キョン -KYON- 「投げつけ」 【↑+A】 「叩きつけ」 【↓+A】 「空中蹴り」 【↑+↑+B】 「カウンター」 【←+B】 注意「技はゲージがMAX時しか使用不可能」 ━技名「蹴り殴キョンキョン」━ 「蹴り」 【B】 「2回蹴り」 【B+A】 「+強パンチ」 【↓】 みくる -MIKURU- 「みくるビーム」 【→+A】 「チェーンソー」 【接近して ↓+B】 「熱湯茶こぼし」 【→+B】 「エアガン発砲」 【B (連続押しで連発)】 「包丁切りつけ」.【B+A 同時押し】 ───技─── ━鉄パイプ刺し━ (ゲージMAX時) 通常に腹に刺す 【A】 顔に刺す 【+B】 即死刺し 【↓+A の後 →+B】 出現方法 「ハルヒ でSTORY MODE をクリア」 小泉一樹 - Koizumi - 「アナル槍刺し」 【背後で相手の方向+B】(女には無効) 「シイタケ殴り」 .【A(連続押しで連殴攻撃)】 「テドドン発射」 【↑で大きくし ↓+Aで発砲】 「テドドン射液」 【B(8回まで可能・行動停止する)】 「空中シイタケ」 【空中で A+B+B+A】 ─技─ (ゲージMAX時) 「キョンたん奪うYO」 【キョンに接近しA】 チームバトルのとき、 これを使うとキョンが仲間になる(キョンが敵の場合) 「シイタケ究極フィア」 1回目【A+↑】 投げ飛ばし 2回目【B+B】 (空中で) 射液2回 3回目【A+→】 とどめ 出現条件 「VIPスレッドタウン でVIPPERを9人犯す」 「キョン でホモハウスへいく」 長門 -NAGATO- パソコン投げ 【→+A】 ムチ攻撃 【A】(小泉にやるとシイタケカウンター) 銃発砲 【B】(連発可能。最大30発) ショットガン 【↑+B】(近ければ大ダメージ) マシンガン 【→+B】 マウス投げ 【↑+A】(連投可能) ─特殊攻撃─ 連続攻撃処理 【↓+B】 (連続攻撃・必殺技を相手が使っている 最中に押す) ───技─── ゲージMAX時 「情報連結解除」 【↑+→+↓+←+B】 10秒後発動。成功すれば相手消滅。 涼宮ハルヒ - HARUHI- かなりの最強キャラ 強蹴り 【A】(大ダメージ) ぶん殴る 【B】(大ダメージ) チェーンソー 【→+A】 (みくるのチェーンソーよりもダメージ大) 首絞め 【↑+A】(Aを連打すれば一時行動停止) 椅子攻撃 【↓+A】(中ダメージ。連打不可能) 日本刀斬【→+B】(大ダメージ。連打可能) ──技── (ゲージMAX時) 大波動砲 (火炎) 【A】 火炎放射の強化版発砲 大波動砲 (爆発) 【B】 (火炎)を撃った後に可能。即死。 ここから先は敵キャラになりまする ダーク古泉 =DARK HOMO= 最初 【殴攻撃 → 空中投げ →アナル砲】 ダメージ中【殴攻撃連続】 ダメージ小【即死攻撃 or 空中シイタケを連発】 死ぬ寸前【自爆。このときHPが少ないと死亡】 ゲージMAX キョンの場合 【アナル槍刺し。キョン即死。回避不可能】 長門の場合【戦闘終了。(長門は死亡しないで、)】 みくる・ハルヒの場合【↑と同じ。】 ラスボスの手下 「 1」 最初【スレ建て(HP回復)を行い、攻撃】 ダメージ中【豚投げ】 ダメージ小【VIPビーム】 死ぬ寸前【防御をずっと行う。】 ラスボスの手下2 「鶴屋さん」 【ハンドガン発砲】 受けるダメージは大きい 【ロケットランチャー】 1発使い捨て。食らうと即死 【ガトリング】 ダメージが少なくなるとずっと連発する 【にょろ】 34回、連続で殴る。1回のダメージは最小 LAST BOSS(キョン編) 「ダークハルヒ」 装備:血濡れ刀 【首斬り】ジャンプし、落下すると同時に首を斬る。即死 【心臓刺し】物凄い速さ。即死。しかし使用回数1回。 【振り回し】 左右に適当に振り回すwww -武器が【チェーンソー】に切り替わった時- 【首斬り】 即死。 【上下振り】 かなりの大ダメージ。食らうとHP1 【肩斬り】 肩にチェーンソーを乗せる。即死 LAST BOSS(長門編) 「朝倉」 【長槍刺し】 即死。長いので危険。 【生命処理】 謎の光に包まれると一発で即死 【武器処理】 されると、武器攻撃不能。技で我慢する 【足処理】 動けなくなる。(一時だけ、) 【生首入手】 首を斬られる。無論、即死。 LAST BOSS(ハルヒ・みくる・小泉) 「谷口」 【蹴り】 0ダメージ 【首絞め】 0ダメージ 【殴る】 0ダメージ 隠しキャラ みくる(スーパーコスチューム) 【↑+A】 みくるビーム・上 【↓+A】 地震マグニチュード9.0起こし ダメージ大 【→+A】 一回転蹴り 【←+A】 バルカン発砲 【A+A】 みくる雷ビーム 【B】 蹴り。(連発で40蹴り) 出現条件 「古泉 がキョンを犯す」 「涼宮ハルヒ ~ファイターズ・メモリ~」 税込み9800円 未発売中!!
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/725.html
少女達の放課後 A Jewel Snow (ハルヒVer) ダーク・サイド 繋ぎとめる想い 涼宮ハルヒの演技 涼宮ハルヒと生徒会 HOME…SWEET HOME 神様とサンタクロース Ibelieve... ゆずれない 『大ッキライ』の真意 あたしのものよっ!(微鬱・BadEnd注意) ハルヒが消失 キョウノムラ(微グロ・BadEnd注意) シスターパニック! 酔いどれクリスマス 【涼宮ハルヒの選択】 内なるハルヒの応援 赤い絲 束の間の休息(×ローゼンメイデン) ブレイクスルー倦怠期 涼宮ハルヒの相談 お悩みハルヒ 絡まった糸、繋がっている想い 恋は盲目(捉え方によっては微鬱End注意) 涼宮ハルヒの回想 小春日和 春の宴、幸せな日々 春の息吹 おうちへかえろう あなたのメイドさん Day of February ハルヒと長門の呼称 Drunk Angel ふたり バランス感覚 Swing,Swing,Sing a Song! クラス会 従順なハルヒ~君と僕の間~ B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~ ハルヒがニート略してハルヒニート 涼宮ハルヒの本心 涼宮ハルヒのDEATH NOTE 思い込みと勘違い 束の間の休息・二日目 束の間の休息・三日目 涼宮ハルヒの追想 涼宮ハルヒの自覚 永遠を誓うまで 涼宮ハルヒの夢現 Love Memory 友達以上。恋人未満 恋人以上……? 涼宮ハルヒの補習 涼宮ハルヒの感染 雨がすべてを 涼宮ハルヒの天気予報 キョンに扇子を貰った日 涼宮ハルヒの幽霊 隠喩と悪夢と……(注意:微グロ) Close Ties(クロース・タイズ) の少し後で セカンド・キス DEAR. 涼宮ハルヒの独白 寝苦しさ 涼宮ハルヒの忘却 涼宮ハルヒの決心 ティアマト(ハルヒ×銀河英雄伝説) 式日アフターグロウ 微睡の試練 涼宮ハルヒの大騒動シリーズ young 神の末路(微グロ注意) 涼宮ハルヒの奇妙な憂鬱 夕日の落ちる場所 涼宮ハルヒの抹消 トラウマ演劇 涼宮ハルヒは夜しか泳げない ハルヒ「釈迦はイイ人だったから!」 (グロ ナンセンス) ハルヒとボカロオリジナル曲の歌詞をあわせてみた 涼宮ハルヒの共学目次 word of thanks 赤色エピローグ 夏の日より 朝比奈さんの妊娠 疑惑のファーストキス 機関の推測(微エロ注意) 涼宮ハルヒの切望―side H― 憂鬱な金曜日 それでもコイツは涼宮ハルヒなんだ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3549.html
「お久しぶりね、キョン君」 ん・・・?この声は・・・?まさか!? そう、俺は、一番聞きたくない奴の声を聞いて目を覚ましたのだった。 「朝倉!?どうしてお前らがここにいる!?というかこれはどうなっているんだ!?それに・・・そこにいるのはハルヒか!?おい、ハルヒ!無事だろうな!?」 場所は今、文芸部部室、もといSOS団アジト。いつもの平穏な空気など微塵も残っておらず、今や部室内は一面が闇に包まれ、暗黒に染まっている。 その中で、ひとつの闘いが、今まさに幕を閉じようとしていた。 「なんか彼、ごちゃごちゃうるさいけど、覚悟はできてるわね?それじゃあ本当に終わりにしましょうか、涼宮さん?いくわよ?・・・・・の攻撃!プレイヤー涼宮ハルヒにダイレクトアタック!!!」 何も言わずにモンスターの攻撃を喰らって吹っ飛ぶハルヒ。そしてライフも0になった。 「大丈夫か!?ハルヒ!?」 駆けつけようにも情報操作でもされているのか、俺の体はピクリとも動かない。 クソ・・・なんでこんなことになっちまったんだよ!? なんで朝倉が復活してるんだ!?こりゃあ一体どうなっているんだ!?これもハルヒの力のせいなのか!? なぁ、ハルヒ。本当にお前がこんな状況を作り上げたのか? 俺は、『闇のゲーム』に立ち会うこととなった原因へとフラッシュバックした。 ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・ 俺は、相変わらず自分に搭載されているコンピューターでは解析不能な「英語」という名の謎の文字列の授業を、素晴らしき「夢」という名の世界に旅立つことによって克服し、SOS団のアジトと化した我等が文芸部室へ歩みを進めていた。 ハルヒはハルヒで、授業が終わるや否や教室を台風の通り過ぎるようなスピードで飛び出していった。たしか手に何か本みたいなのを持っていた気がするな。あまりのスピードでよくわからんかったがな。本なんかアイツに似合わんが一体どうしたんだ? なんて、そんなことを考えているうちに俺の足は文芸部室のドアの前についていた。 コンコン、とノックをする。もしかしたら、麗しのマイスイートエンジェル、朝比奈さんがお着替え中かもしれんしな、うん。たまにはノックをし忘れたことにしてそのお姿を拝見してみたい、なんて考えたことないぞ。本当だ。本当だからな。 「はぁ~い、どうぞぉ~」 天使のような声が耳をうずかせる。どうやらもう着替えは終わっているようだ。ちょっと残念・・・なんて思ってないからな。 かちゃり、と戸を開けると、そこにはいつもの席で石像の様に静かに本を読み続ける宇宙人、小動物のように愛くるしい未来人、0円スマイルを貼り付けてニヤニヤしている超能力者、そして、我等が団長、涼宮ハルヒがいた。 「すぐにお茶を淹れますから、ちょっと待ってて下さいね~」 いつもいつもありがとうございます、朝比奈さん。もう俺はあなたのお茶なしでは生きていけませんよ。 「うふふ、ありがとうございます。お世辞でもうれしいです」 そういうと朝比奈さんはちょこちょことお茶を淹れにいった。教室で少し様子のおかしかったハルヒは、というと、相変わらず、まるで長門のように本のようなものを読み漁っていた。 その本が何かって?そんなの俺にも分からんさ。なぜならカバーをかけているからな。 それに、険しい顔して読んでるもんだから、聞く気にもならんしね。 「おい古泉、ハルヒのやつ、また機嫌でも悪いのか?授業の時からずっとあんな感じなんだが」 「いえ、そういう事はないようです。僕のところにはなんの連絡も入っていませんし」 まあ古泉がそういうんだ。間違いはないだろう。触らぬ神に祟りなし、というやつか。 「それはそうと、久々にアレ、やりませんか?実は結構楽しみにしてたんですよ」 別に構わない、というより実は俺も結構楽しみにしていたぞ。最近ご無沙汰だしな。だが手加減はせんぞ。俺の無敗伝説をコレでも更新したいからな。 「今回は甘く見ていると痛い目にあうかもしれませんよ?」 望むところだな、それじゃいくぞ! 「「決闘(デュエル)!!!」」 結果から言ってしまうと俺の勝利だった。マイスイートエンジェル、朝比奈さんの前で醜態を曝す訳にはいかないからな。長門もちらちらと見てたし。だが、古泉は古泉でなかなか強かった。 少しでも手を抜いていたら下手したら負けてたかもしれん。 「今回は結構自信があったのですが。いやはや、やはりあなたはお強いですね」 いつもより一割くらい減ったニヤケ具合で話しかけてくる。お前はそんなに俺に負けたのが悔しかったのか?でもお前も十分強かったぞ。 「あなたが僕のことをそういうなんて珍しいですね。僕もまだまだ捨てたもんじゃないってことですか」 調子に乗るな。そういうのは俺に勝ってから言え。挑戦は受けてたつぞ。 「ではお言葉に甘えまして、もう一勝負どうです?今度は負けませんよ?」 いいだろう、相手をしてやるよ。来い、古泉! 「それでは・・・」 「「決・・・」」 闘と続けようとしたが、突如、 「覚悟はいいわね、キョン!!!滅びの呪文、デス・アルテマっ!!!」 との言葉とともに後頭部に激痛が走る。あまりの痛みに、少しの間、頭を抱えたまま悶絶する。そしてしばらくして後ろを見ると、モップの柄をもって、目をキラキラ輝かせながら団長様が仁王立ちしていた。 「痛ってえな!なにしやがる!」 「何ってデス・アルテマよっ!あんた、聞いてなかったの?」 そういう問題ではない。俺が聞いているのは何でお前がモップの柄で俺の頭を叩いたのかってことを聞いているんだ。ただでさえ赤点レーダーギリギリ低空飛行な俺の頭がこれ以上悪くなったらどうするんだ? 「あんた、もうあんまり悪くなりようがないじゃないのよ。そんなことよりやっぱりデュエルモンスターズは王国編よね!ストーリー的にあれが一番面白いわよ!」 そうかい、俺の話はもうスルーかい。そしてお前が今日ずっと読んでいたのはアレだったのか・・・。それと古泉、お前、見えてたんならあいつをちゃんと止めろよ。俺は痛いこととか苦しいこととかはまっぴらなんだからな。 「すみません、不注意でした」 そのニヤニヤ顔で言われても全く誠意が伝わってこないのだが。 「ごごご、ごめんなさい、キョン君・・・」 いえいえ、あなたが謝るなんて、とんでもないですよ、頭を上げてください、朝比奈さん。悪いのはハルヒの馬鹿なんですから。 「…………」 お前も気にしなくていいぞ、長門。 「あんたを差し置いて誰が馬鹿よっ!それにあんたねぇ、もう過ぎたことを気にしても遅いのよ!ちゃんと前を見なくっちゃ、前を!」 やれやれ、当の本人がなんとも思っちゃいないなら意味ない、か。 「それよりもキョンに古泉君、あんたたちがやってるのって、デュエルモンスターズよね!?私もいまデッキあるのよ。さあ!どっちか決闘しなさい!」 そういって、ハルヒは自分のポケットからデッキを取り出した。目には炎を灯らせてな。しかもなぜか腕章には『決闘王』の文字が。 悪いが古泉、続きはまた今度になりそうだな。 「そうですね。残念ですが仕方ありません」 「そこっ!コソコソしゃべらない!じゃあ・・・そうね、キョン。あんたが相手しなさい!」 やれやれ、もうすっかりさっきのことを忘れてやがる。仕方ない、カードで軽く仕返しでもしてやるか。 「分かったよ、こい、ハルヒ」 「あんたなんかに絶対負けないんだからね!」 こうして俺たちの決闘は始まった訳だが、思惑通りあっさり勝負は決まってしまった。 「・・・え?嘘よ・・・こんなの嘘よ・・・もう一度勝負よ!」 構わんぞ。何度やっても変わらんと思うがな。それに俺の鬱憤晴らしにもなるしな。 その後、三回ほど決闘し、俺が全勝したところで長門がパタンと本を閉じて、お開きとなった。俺に数連敗してぶつくさ言いながらぶーたれているハルヒをよそ目に俺はカードを片付け、デッキをしまおうと鞄をあけた。そうしたら中に何のラベルも貼られていない謎のディスクが入っているではないか。ここに来る時は確かなかったよな?古泉とやるために鞄を開けたときは・・・・覚えていない。が、恐らくその時にでも紛れ込んだのだろう、と思って他の部員に声をかけた。 今思えばあんな怪しいものはないのだが、そのときの俺はなんとも思わなかったのかね。出来る事なら過去に戻って面倒なことになるからやめろ、と過去の俺に言ってやりたいくらいだ。残念ながら俺にそんな記憶はないので、できない話なんだろうがな。 「このディスク、誰のだ?俺の鞄に入っていたんだが」 古泉、お前か? 「いいえ。違いますよ」 じゃあ長門か? フンフンと頭を横に1ミクロンくらい振る。 なら朝比奈さん、あなたのですか? 「ふえっ?何ですか?え~と、そのディスクですか?う~ん、違う・・・と思いますよ」 ということは消去法でハルヒ、お前のだな? 「違うわよ。でも何か怪しいわね!キョン、これの中身調べるわよ!」 と言ってディスクを俺の手から奪い取った。 「なぁ、長門、あのディスク、大丈夫なのか?」 「……分からない。あのディスクには高度なプロテクトがかけられている。それを解くには情報操作が必要」 と言ってチラッとハルヒを見た。そうか、アイツがいるからそれができないんだな? そう聞くと長門はコクッと頷いた。古泉もこの話を聞いていたらしく、アイコンタクトを送ってくる。ピコッ、とパソコンの起動音がした。 「さぁて、この中身はなんなんでしょうね!?もしかして宇宙人からのメッセージが入ってるとか!?あ!まさか!キョン、実はあんたのディスクで、中にいやらしい画像とかが入ってるんじゃないでしょうね?」 馬鹿かお前は。もし本当に自分のだったらいちいち人に聞かんぞ。 「さぁ、どうかしら?あ、ついたついた」 そういって起動したパソコンに目を移す。長門は少し緊張した顔をしている。古泉もいくらか真剣な目をしていた。 カチッ。 その音を聞いて俺は自分の意識を突如として失った。 ================================================================= 「一体何よこれ!?どうなってんのよ!」 ディスクのデータをクリックして起動させたとたん、部室一面が闇に覆われてしまった。 ぱっと見、前に見たキョンと二人っきりの夢の世界に似てるけど・・・ ううん、ぜんぜん違うわね。あの巨人こそいないものの、なんか禍々しいものを感じるというか・・・ 「ね、ねぇキョン?」 これどうなってんのよ!?と言いかけてあたしは言葉を失った。 だってそこにはさっきまでいたはずのキョンが、いや、キョンだけじゃない。有希やみくるちゃんや古泉くんといったみんなが、どこを見回しても影も形もなく消えちゃってるんだもの。 もう一度パソコンに目を移す。だってこれをやってからおかしくなったのよ?だったらもっかいなにかをやれば元に戻るはずよ!そう思ってパソコンに手を伸ばしたとき、突如あたしの後ろから声がした。 「ふふふ、お久しぶりね、涼宮さん?」 ハッとして後ろを振り返る。 「あんたは・・・朝倉?!いつの間に!?いったいどこから!?」 「あら、せっかくの再開なのに、その言い様はないんじゃないの?」 「そんなことどうでもいいのよ!それよりも、ねえ、あんた、みんなのこと知らない!?」 「知ってるわ。だってあたしが閉じ込めたんだもの。」 「ならさっさと解放しなさい!」 「いいわよ。ただし、命をかけた『闇のゲーム』でわたしに勝てたら、だけどね。もちろん決闘で」 そういって朝倉は左手をガッツポーズの形にした。その腕にはいつの間にか決闘盤(デュエルディスク)がついている。一体いつの間につけたのかしら?それに『闇のゲーム』って・・・まさにあたしが今日読んでたあたりじゃない!でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。 「なんだかよく分かんないけど、その勝負、乗ってやろうじゃないの!このあたしに決闘を申し込んだことを後悔させてやるわ!」 そう言ったとたん、急に左手に重量を感じた。なんと、あたしの腕にも決闘盤が。 ほんと、これこそまさに不思議よね。・・・てそんな場合じゃなかった。 「分かったわ。それじゃあいくわよ?」 「「決闘!!!」」 掛け声とともにあたしたちはデッキから5枚のカードを引いた。 「ふふふ、闇のゲームの始まりよ!わたしの先行、ドロー!そうね、ここはリバースカードを2枚セット、さらにモンスターを守備表示でセット。これでわたしのターンは終了」 朝倉がカードをセットするのと同時に巨大なカードのビジョンがブォンという音と一緒に部室内に現れる。何よこれ!超おもしろそうじゃないの! 「それじゃいくわよ!朝倉!あたしのターン!ドロー!あたしはヂェミナイ・エルフ(攻1900/守900)を召喚!」 さっきと同じように、ブォンという音とともにフィールドに双子エルフのヴィジョンが出現する。 「それじゃ、いくわよ!ヂェミナイ・エルフであんたのモンスターを攻撃!」 エルフの姉妹の息のあったコンビネーション技が相手に決まり、セットされたモンスターがパリーンという音とともに撃破される。凄いじゃないの、これ!!! 「やったわ!どうよ、朝倉!さっさと観念しなさい!」 「ふふっ、ありがと、涼宮さん。あなたの攻撃したモンスターはリバースモンスター、メタモルポット(攻700/守600)だったの」 メタモルポット・・・確かアレは・・・ 「あなたの攻撃でメタモルポットは表表示となり効果発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、新たにデッキから5枚引く」 やっぱり!?せっかく手札にいいカードがあったのに!ううう、悔しいわね。 「あんた、よくもやってくれたわね!?」 「ううん、本当はこれからなのよ?」 といって朝倉が微笑む。それを見たあたしは、なんだか嫌な予感がしたの。まあそれは奇しくもあたることになるんだけど・・・ そして突然、ウヲヲヲヲヲヲという地獄の底から響いてくるような雄たけびが聞こえ、暗黒の渦が現れ、雷とともに中から一体の白銀の悪魔がフィールドに舞い降りた。 なんで!?なんでこんな強そうなモンスターがいきなりでてくんのよ!? 「このカードは暗黒界の軍神シルバ(攻2300/守1400)。このカードは他のカードによって手札から墓地に送られたとき、フィールドに特殊召喚することができるの。あなたがメタモルポットを攻撃してくれたおかげよ。そのおかげでデーモンの召喚が墓地にいっちゃたんだけどね。一応お礼を言わせてもらうわ」 何よそれ、反則じゃない。いきなり2300とか対抗できるわけないじゃないの! 「だ、だったらリバースカードを1枚セットしてターン終了よ!」 朝倉、かかってきなさい!あんたなんか次のターンでボコボコにしてやるんだから! 「わたしのターン、ドロー!まずは手札から魔法カード、未来融合-フューチャー・フュージョン-を発動!このカードが発動したとき、わたしは融合モンスターを指定して、それの融合素材をデッキから墓地に送る。そして2ターン後のスタンバイフェイズ時にその融合モンスターを特殊召喚することができるの。ちなみにわたしが選ぶモンスターは有翼幻獣キマイラ。よって、デッキから幻獣王ガゼルとバフォメットを墓地に送るわ」 ううう、厄介なカードね。でもなんでキマイラ?あれはそこまで強くないじゃない。 「そして手札からシャインエンジェル(攻1400/守800)を召喚!」 リクルーターね。戦闘で破壊してもデッキから特殊召喚してくる嫌なカードだわ。 「ふふふっ、それじゃバトルフェイズね。いくわよ!暗黒界の軍神シルバでヂェミナイエルフを攻撃!」 やっぱり来たわね。でもこの攻撃をくらうわけにはいかないのよ! 「今よ!リバースカードオープン!攻撃の無力化!よってシルバの攻撃は無効よ!」 「なんですって!?」 「残念だったわね、朝倉!これであんたのバトルフェイズは終了よ!」 「やるわね。ターン終了よ」 ふう、危なかったわ。エルフが破壊されてたら結構やばかったかもね・・・いくわよ!朝倉! 「あたしのターン!ドロー!あたしは手札から魔法カード、召喚師のスキルを発動っ!このカードは、デッキから星5以上の通常モンスターを手札に加えるカード。あたしはこの効果で真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)を手札に加えるわ。」 「あら、あなたのフィールドにはモンスターは1体しかいないわよ?どうやって出すつもり?」 「まだあたしのメインフェイズは終わってないわ!今度は手札から黒竜の雛(攻800/守500)を召喚!」 「ふふっ、なぁに、そのかわいい竜は・・・ん?・・・・はっ!そ、そのカードは!?」 「ようやく気がついたようね、朝倉!あたしは黒竜の雛の効果を発動!表表示でフィールドに存在するこのカードを墓地に送ることによって、あたしは手札から真紅眼の黒竜を特殊召喚することができる。出でよっ!真紅眼の黒竜((攻2400/守2000)!」 フィールド上にいた可愛らしげな雛が閃光に包まれたかと思うと、疾風とともに中から大きな黒竜が現れた。くううう、かっこいいじゃない!あたしのレッドアイズ!!! 「えっ・・・ここで一気に形勢逆転されるなんて!?」 朝倉の顔に驚きの色が浮かぶ。いくわよ、レッドアイズ! 「バトルフェイズに入るわ!レッドアイズでシルバに攻撃!」 レッドアイズが口を開き、そこに熱く燃え盛る炎がみるみるうちに集まっていく。 「喰らいなさい!黒・炎・弾!!!」 レッドアイズの口から炎が発射され、シルバを捕らえた。ドガァァァァァンという轟音の後にはもはやシルバは完全に消え去っていた。 「くっ!!!やるわね!?」 よし、朝倉のライフが3900になったわ。このまま一気に攻めるわよ! 「それと、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃!」 「きゃあああ!!!!」 これで朝倉のライフは3400。このまま一気に押し切るわよ! 「ちょ、ちょっと待ってもらえる?シャインエンジェルの効果を発動するわ」 なによ?なんかあるわけ? 「シャインエンジェルが先頭で破壊されたとき、わたしは攻撃力1500以下の光属性モンスターを特殊召喚することができるわ。だからわたしはもう一度シャインエンジェルを特殊召喚」 リクルーターだったのすっかり忘れてたわ。まぁ盾ってわけね。なかなかしぶといじゃないの。 「これであたしのターンは終了よ」 「それじゃあわたしのターンね。ドロー!そうしたらリバースカードを2枚セット。シャインエンジェルを守備表示に。これでターン終了するわ。かかってきたらどう?涼宮さん?」 なんだ、朝倉ったらよくわからない魔法使っただけで何もしかけてこないじゃない。あのリバースカードは気になるけどね。あたしのライフはまだ無傷だし、攻撃あるのみ、かしら。 「あたしのターン、ドロー。下級モンスターはこない、か。なら戦うしかないわね、いくわよ、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃っ!」 どうどう?トラップは来るの!?・・・とハラハラしたが、どうやら間違いだったみたいね。だって、苦い顔しながら効果でもう一度シャインエンジェル出してきたくらいだもん。 これってかなりのチャンスよね!? 「続けてレッドアイズでシャインエンジェルを攻撃よっ!黒・炎・弾!!!」 朝倉のモンスターは攻撃表示。特殊召喚されるのは厄介だけど、1000ダメージは大きいわね。なんて思ってる間に黒炎弾がシャインエンジェルに命中し、爆発が起きる。それで出た爆煙がフィールドを埋め尽くした。 でも朝倉が包まれる寸前、その顔に笑みが浮かんでいたのは気のせい、よね・・・? 「どうよ朝倉。1000ダメージは痛いでしょ!?あんたがいくらモンスターを呼ぼうと・・・」 「それ、よんでたわよ、涼宮さん!あなた、自分のライフを見てみなさい」 煙の中で朝倉が笑う。何が言いたいのよ?あたしのライフ4000のままでしょ?減ってるわけが・・・・・ あれ?なんで?なんであたしのライフが3000になってんの!? 「それはわたしがトラップを発動したから」 煙が徐々に晴れ、そのトラップが姿を現した。 「トラップカード、ディメンションウォール。このカードは、プレイヤーが戦闘ダメージを受けたときに発動するカード。その戦闘ダメージを相手に与えることができる。よってあなたに1000ダメージ!」 「くっ、そうくるなんて思ってもみなかったわ」 最初の攻撃で使ってこなかったのは戦闘ダメージが発生しなかったからなのね。モンスターを伏せてこなかったのも、確実にシャインエンジェルに攻撃させるため、か。 ホント強いわね、こいつ。ライフ的には負けてるけど、朝倉の場はリバースカード1枚と未来融合だけ。次の朝倉のスタンバイフェイズにキマイラが出てくるけど・・・ レッドアイズの敵じゃないわね。それにこのカードがあればキマイラなんてちょちょいのちょいよ。しょうがないけど、このターンはもう何もできないかな。 「あたしはリバースカードを1枚セットしてターン終了!」 「いくわよ、私のターン。ドロー!スタンバイフェイズで有翼幻獣キマイラ(攻2100/守1800)を未来融合によって特殊召喚!」 残念だったわね、キマイラは破壊させてもらうわよ! 「今よ!リバースカードオープン!速攻魔法、サイクロン発動!」 相手ターンでも使える速攻魔法。サイクロンはその中でもかなり優秀で、フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊することができる。 未来融合は、未来融合自体が破壊されたら特殊召喚した融合モンスターも破壊する効果も持っていたはず。これで相手のフィールドはほぼがら空きね! 「もちろん破壊するカードは未来融合よ!」 グラフィック化された未来融合のカードに向かって一つの竜巻が迫る。これで朝倉ももうお終いよ! 「惜しかったわね!リバースカードオープン!カウンタートラップ、マジックジャマー!このカードは手札を1枚捨てることによって、相手の魔法カードの発動を無効化し、破壊することができるカード。よって、わたしは手札を1枚捨てて、サイクロンの発動を無効化するわ!よって、キマイラも健在よ。」 竜巻の進行方向に魔方陣が突如として現れ、竜巻を吸い込んでいった。 「ふ、ふんっ。でもあんたのフィールドにはキマイラしかないじゃない。だったら早めにあんた自身で負けを認めなさい!それで、このゲームを終わらせてみんなに会わせなさい!」 あたしがそう言ったとき、朝倉は、ふふふっ、とこれで何度目か分からない笑いをこぼしたの。その眼には狂気の色を浮かべて。 「そうね、このゲームを終わらせるのにはわたしも賛成だわ。でもね、負けるのはあなたよ」 何言ってるのよ、圧倒的に有利なのはあたしのほうじゃないの。 「見てれば分かるわよ。嫌でもね」 その時あたしはなんだかとっても嫌な感じがしたの。何度もそれが何かの間違いであるように願ったわ。でもね、嫌な予感ってのはなかなかはずれないもんなのよね。 「まずは速攻魔法、魔道書整理を発動。これによってわたしはデッキの上から3枚までのカードを見て、それを好きな順番で戻すことができる」 朝倉はデッキの上から3枚のカードをめくり、ふふん、と笑って順番を入れ替えた。何考えてるのかしら?まったく分からないわ。 「残念ね、涼宮さん。あなたの負けはもう規定事項みたい」 は?あんた何言ってるのよ? 「ふふっ。すぐに終わらせてあげるわ。わたしは、墓地に存在する、デーモンの召喚、暗黒界の軍神シルバ、バフォメット、シャインエンジェルの、3枚の闇の悪魔、1枚の光の天使をゲームから除外し、混沌の世界から破滅の使者を呼ぶわ!降臨せよ!天魔神ノーレラス(攻2400/守1500)!!!!!」 そう朝倉が言い放つと、あたしと朝倉の間に闇が集まり、ゲートを作り出した。そのゲートの中心部から一筋の光が放たれ、その中から暗黒の巨体に闇の翼を生やし、髑髏の仮面をつけた、邪悪な魔人が現れた。なんなのよ、コイツは・・・ 「お、大口たたいた割には、出てきた奴はレッドアイズと同じ攻撃力のモンスターじゃない。あんた、まだ本当に勝つつもりなの?」 確かにレッドアイズと同士討ちされて、キマイラでヂェミナイを攻撃されたら痛いわね・・・でもあたしの手札には聖なるバリア-ミラーフォース-があるのよ。次のターンで相手モンスター全滅よ!この状況であたしが負けるわけないじゃない。 「あら、何を勘違いしてるの?わたしはノーレラスでは攻撃しないわ」 じゃあ何のために出したっていうのよ? 「もちろん効果のために決まってるじゃない。あなたを敗北の道に突き落とすための効果をね」 あんた、一体なにを考えてるのよ? 「見せてあげるわ!ノーレラスの効果発動!プレイヤーはライフを1000払うことによって、お互いのフィールド、手札を全て破壊し、墓地に送る!その後、お互いはカードを1枚引く」 ええ!?あたしのミラーフォースが!レッドアイズが!なんてことなの!フィールドと手札がリセットされちゃったじゃない!こんなのって反則よ! で・・・でも何かしら?何か忘れているような気が・・・・ 「あながちそれも間違いじゃないわ」 その言葉であたしは朝倉のフィールドを見て、そして驚いた。 「なんで!?すべてのカードが破壊されたはずなのになんであんたのフィールドにモンスターがいるのよ!」 おかしいじゃない!まだカードだってドローしてないわよ? 「あなた、キマイラの効果、覚えているかしら?」 キマイラの効果・・・?確か・・・キマイラが破壊されたときに、墓地から幻獣王ガゼルかバフォメットを場に特殊召喚できる・・・・・っ!!! 「そうよ。ノーレラスによって破壊されたキマイラは効果を発動!わたしは幻獣王ガゼル(15攻00/守1200)を攻撃表示で特殊召喚!」 あたしには今手札も場もがら空き・・・次のターンまでもつの?! 「それよりも涼宮さん、わたしたちはまだドローしてないわよね?」 ええ、そうね。このドローで次のターンにつなげるしかないもの。 「それと、さっきわたしが使ったカードも覚えてる?」 何だったかしら?確か・・・魔道書整理・・・ってまさか!?今のために!? 「そうよ。全てはこのときのため。それじゃあゲームを終わらせましょうか。あなたの敗北でね。幻獣王ガゼルを生け贄に、偉大魔獣ガーゼット(攻0/守0)を召喚!」 攻守0ですって?そんなカードで何ができるっていうのよ? 「あら、あなたはこのカードの効果を知らないの?なら教えてあげる。このカードはね、このカードを召喚するのにつかった生け贄モンスターの攻撃力の2倍の数値を自分の攻撃力として得ることができるのよ」 そ・・・それじゃあ今、ガーゼットの攻撃力は・・・・・ 「3000、ね。ちょうどあなたのライフポイントと同じね」 あたしは絶望した。この攻撃を耐えることなんて不可能だから。そう・・・あたしの負け、なのね・・・ 「朝倉、あたしの負けよ。でも、ひとつだけお願い聞いてもらえないかしら?」 「いいわよ。どうせこの後消えちゃうんだもんね。わたしにできる範囲なら構わないわ」 よかった。それを聞いて安心したわ。 「じゃ、じゃあ・・・・・キョンに会わせてほしいの」 「あら、そんなことでいいの?いいわよ、会わせてあげる。でもしゃべっちゃ駄目よ?」 分かったわ。会えるだけでも十分よ。それを聞いて朝倉は満足したのか、ポケットからカードを1枚取り出し、なんかよくわからない言葉を早口でつぶやいた。そして、カードが一瞬光ったかと思うと、部室の空間の一角が歪み、そこからキョンが出てきた。 あれから数十分しか経ってないのに、すごく懐かしく感じる。でも、キョンは目を閉じていた。 「ちょっと!キョン、気失ってるじゃない!あんた、何やったのよ!」 朝倉は、大丈夫よ、と言うと、また謎の早口言葉を始めた。なんなのかしら、あの呪文は。 「お久しぶりね、キョン君」 しばらくして朝倉がそういうと、キョンが目を覚ました。 ああ、これでもう未練はないわ。いや、もうすこしこいつと話がしたかったな・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ 「大丈夫か!?ハルヒ!?」 体が動かせない分、ありったけの声を張り上げる。頼む!無事でいてくれ! 「そんなに心配しなくてもすぐ起きるわ。何もしてないもの。だって彼女、まだ罰ゲームを受けてないからね」 「貴様!これ以上ハルヒを苦しめるな!なんなら俺が相手になってやるぞ!」 俺なりに一番迫力がありそうな眼で朝倉を睨み付ける。身体はエースキラーに捕まったウルトラ兄弟みたいな格好で動かせないがな。そこ、ダサいとか言うな。 「でもこの決闘は彼女も望んでしたこと。きつく言うようだけど、部外者のあなたには関係ないことよ。闘ってみたいっていう気持ちもあるけどね」 な、なら俺と・・・! 「あら、彼女が起きたみたいよ」 俺は、朝倉がそう言い終わるのよりも早くハルヒのほうを向いた。 「おいハルヒ!ここからさっさと逃げろ!逃げるんだっ!」 「・・・あんた、何勘違いしてるの?」 ハ・・・ハルヒ?その顔は冷静そのものだった。 「決闘ってのはね、そもそも古代ローマで、奴隷たちが自由を求めて命を懸けて闘ったのが始まりなのよ?それはあたしたち決闘者も同じ。あたしは負けた。命を懸けた決闘に。その闘いはあたしの望んでしたことだった」 その真剣な表情に俺は何も言い返せなかった。俺にこんな覚悟はできるだろうか。俺はハルヒみたいに何かに命を懸けられるだろうか。 「だからね。あんたには笑って見送って欲しいの」 ハルヒ・・・お前・・・ 「お話中悪いけど、そろそろいいかしら?もともとしゃべらないって約束だったんだし」 「ええ・・・そう、ね。もう時間ってわけか。」 ちょっと待ってくれ・・・頼む朝倉・・・待ってくれ! そんな俺の必死の願いも虚しく、朝倉はポケットから何も書かれていないカードを取り出した。 「それじゃ、さようなら。涼宮さん。罰ゲーム!!!魂の牢獄!!!」 そしてその口から無情な言葉が発せられた。ハルヒの体から光が抜け出し、カードに吸い込まれていく。全ての光がカードに吸い込まれる直前、あいつは言ったんだ。 「今までありがとね・・・キョン・・・」 静かに、そして悲しい微笑みを浮かべながら。 「ハルヒ!?ハルヒーーーーっ!!!!!!」 ドサッ。 ハルヒが床に倒れる。その瞬間、俺の体も動くようになっていた。その証拠に、その場に俺は泣き崩れていたんだ。 「くそおおおおぉぉおおおぉおおぉおぉ!!!!」 なんで!なんで俺じゃなかったんだ!なんで俺じゃいけなかったんだ! 「ひとつだけ、いい事を教えてあげる」 なんだ・・・? 「涼宮さんがわたしの闇のゲームを受けたのはね?あなたたちのためだったのよ?」 ・・・・・それはどういう意味だ? 「わたしは、あのディスクが起動したとき、対象を全ての能力を封じ、かつ意識を失わせた上で空間閉鎖された亜空間に閉じ込めるようにしたの。あ、いい忘れたけど亜空間っていうのはこのカードね」 そういって朝倉はみんなが描かれたカードを見せてきた。 「もちろん、対象と言うのはあなたたちのこと。」 それじゃあハルヒは・・・ 「あなたたちを助けるためにわたしの決闘を挑んだのよ」 体中に電撃が走ったみたいだった。悔やんでも悔やみきれないとはこのことだろう。そう。この事件は俺が引き起こしたも同然、いや、俺が引き金となって起こったものだったのだ。そのために古泉が。長門が。朝比奈さんが。そしてハルヒが。 それと同時に俺は分かったんだよ。俺が命を懸けれる、懸けなければならないものってのがな。 「・・・・・朝倉」 「なにかしら?」 「俺はお前に闇のゲームを申し込む」 あいつらのためなら、あいつらとの毎日を取り返すためなら、この命、微塵も惜しくはない。 「そうね。いいわよ」 ならば話が早い。いまここで・・・ 「でも条件があるわ」 条件だと?さっさと言え。 「それはあなたがわたしのところに辿り着く事」 はぁ?お前はなにを言っているんだ?全く話がつかめんぞ。ちゃんと言え。 「んん、もう。キョン君が突っ込むのが早いんじゃない。ちゃんと聞いてよね」 ああ。分かった。 「これからあなたにはある島に行ってもらって、その島にあるお城を目指してもらうわ。でもここからが重要。お城に入るには4つの証が必要なの。その4つを持っているのは4人のプレイヤーキラー。1人1つ持ってるから全員倒してもらうわ」 簡単に言うと、全員倒さなきゃお前とは闘えんということか。 「うん。そういうこと。言い忘れてたけど、あなたのライフと命は繋がってるからね」 簡単に言うと、俺のライフが0になったら俺は死ぬってことか。 「うん。そういうこと」 ・・・負けるわけにはいかないな。あいつらのためにも、俺のためにも。 「分かった。それじゃ、俺を島へ送ってくれ」 構わん。俺は勝たなきゃならないからな。いや、勝つんだからな。 「ふふっ。そういうところ、嫌いじゃないわよ。ええ、分かったわ。始めましょうか。」 ・・・・・すぐに助けてやるからな。待ってろよ、ハルヒ、長門、古泉、朝比奈さん。 「「それじゃあいく「わよっ!」「ぞ!」」」 「「決闘!!!」」 そう口にした瞬間、俺は閃光に包まれ目を閉じた。 失ったもの、命を懸けられるもの、その「答え」を取り戻すため。 俺は長く険しい闘いのロードへと足を踏み出したんだ。 ~涼宮ハルヒの決闘王国2へ続く~ ※この作品は「涼宮ハルヒの決闘」を参考にさせていただいております。 このような場所で恐縮ですが、改めてお礼とお詫びを言わせていただきたく思います。 作者様、どうもありがとうございました。そして、許可なく参考にさせていただき、すみませんでした。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2945.html
第三章第一話「戦争とは利害の不一致である。そして双方のわがままである」 なんかかっこいい題名になっているが おそらくどこかの誰かさんが壊れたのだろう そういうことは世界の法則が乱れる原因のひとつになるのだが あいにく一般人の俺にはどうにかできるわけでなく 変な文章とともにこの話をはじめなきゃならないことに 俺は少々苛立っていた そんないろいろなことを考えているうちに 広場のスピーカーの立ててあった位置に 鶴屋さんは革命軍とかかれた旗を立てていた でもそんなのかん慧音ぇ!! あれ?なんかおかしいな? 俺にまでどこかの誰かさんの影響でてきたか? 常識代表の俺が壊れたら意味ないぞ? 昨日と今日、理性ぶっ飛んで暴走してたが。 まあそこは長門がカバーしてくれると思うけど。 「嫌い―――嫌い―――Loveing―――誰が誰が―――」 前言撤回、だめだこりゃ 俺は旗立てに夢中になっている鶴屋さんに話し掛けた 「何で鶴屋さんが戦車に乗ってたんですか?」 「にょろ、ちょろんとした理由があってね軍隊の戦車隊の隊長やってるにょろ」 「今の状況ってものすごい状態だとおもいませんか?」 「そうなんだけど、二重の記憶があるからそんなに気になってないにょろ」 ああ、二重記憶パターンね 古泉たちと一緒か まぁなんとなく現在の状況に適応してるようだ 「それにしてもすごいね~、この状況ってハルヒが作ったものって」 え?今何といった? 「あれ?知らなかったにょろか?私は心をよめるんだよ?」 なっなんですとー!? それが本当なら俺たちの関係丸見えってこと? 「そうにょろよ~」 さっきから心読みられまくりで認めざる負えなくなって来た はぁ、とため息ついたあと顔を上げるとSOS団の人たちがいつのまにか集まっていた 今の話を聞いていたらしい 「それが本当なら、私の心読んでみなさいよ。」 「ナイフとキョンくんといろいろとやばいものがあるにょろ」 何ですかそのガーンと効果音がつきそうな顔は!? というかやばいものって何!? 「さえない男の子と***なことを想像してる幽霊もいるね」 ハルヒ、なぜ幽霊なのに鼻血をだす!? 「アーッな想像と究極の肉体と本当は疲れてるけどそんなそぶりを見せてない人がいるにょろ」 古泉、お前そんなところで転ぶようなやつじゃないだろ!? 何があった!? 三人が横でうろたえているが そんなことお構いなしに鶴屋さんは 本を読んで立っている長門の周りをくるくる回る 「いつも難しい事考えているんだね、長門っちは、 でも別の人格がまざってるよにょろよ?」 「問題ない。」 「キョンくんも別の人格があるにょろよ?しかも結構危険な人格だし」 「あー、たぶん問題ないと思います、身の危険を感じないと出てこないと本人言ってましたし」 「ならいいんだけど・・・もうちょっともう一つの人格について考えたほうがいいよ」 そういわれて俺は本能の方について深く考えたこと無かったな・・・ あんなものがまた暴れたら洒落にあらない可能性だってある まあ本能も俺自身なわけだからSOS団員を傷つけるとは思わないが 「アニソーン―――アニソーン―――このホシの無数の塵の一つだと―――」 おい長門、空気読め、最近お前変だぞ せっかく人がシリアスになってたのにも関わらず場の空気を乱してもらっては困る もしかして誰かさんの影響が出てくるのか 「もう我慢出来ない。あいつと決着つけてくる」 「おい、ハルヒ大丈夫なのか?」 「大丈夫よ話をつけてくるだけだから」 え?何、話を勝手にすすめてるの? これから先の話にハルヒがいないと困るんだけど というかこの僕に対等に戦えるとでも? 「来たわよ!」 え、おま ここから先は血が滲んでて読めない おや?つづきがある・・・ 僕は恐ろしいものを見た 自分自身を過信してたのかもしれない まさか、ハルヒから攻撃を受けるとは思ってなかったのだ ハルヒが神人を出した こちらも幽波紋をだし抵抗する 前みたいに互角の戦いと思われたが なぜか今日はパワー負けしてたのだ 少しずつ私は不利になり奥の手を使おうとしたときだった 目の前が真っ暗になったのだ! その直前に見えた赤い瞳が忘れられない・・・ えーとすこし、いいですか? 話をややこしくするな それに第一読者が混乱するだろうが さらに話がぜんぜん進まん 「明日は敵との交戦にょろ。戦いの準備をしておくにょろよ。」 ・・・もう何もいうまい、いつのまにか日が暮れていることも 戦いがあると聞いたSOS団-1+2はそれぞれ武器を準備し そのまま食事をし その後すぐに寝た でも戦車が絡む戦闘って剣とか弓とかナイフとか使えそうにないが。 そんなことグダグダ考えているうちにいつのまにか寝てしまった 一方ハルヒ(偽)と数人の兵士たちは 「キョン達がどこにいるかは分かったわ あとは攻め込んで捕らえるだけだけど・・・」 「革命軍が拠点にしてますね・・・」 「かなりの戦力がいるようです。」 「それに報告によりますとキョンの戦闘能力も意外に高いとのことです 「今回の目標はキョン達の捕獲と革命軍との戦闘の勝利ね、失敗は許されないわよ」 「はい、必ず成功させます」 SOS団の未来を賭けた戦いが始まる 続く・・・ 第三章第二話「そろそろ自分の脳を疑ったほうが良いんじゃないの?」 タイトルが意味深・・・ そんなことは置いといて 朝早起きをした俺は洗面所で歯を磨いてる 食事も済まし、戦闘もあと3時間あとくらいに始まる予定だそうだ 口をゆすぎ歯ブラシを元の位置に戻すと廊下を歩いてくる長門 何かつぶやいているようだ 「―――urigusanirataguohuoyzagurerawomooturietisasowotokonayskuasaknoykukarosoahabotokonurotiat」 何を喋っているのかぜんぜん分からない。こういう場合何か不都合があった場合だ 「どうした?何かあったか?」 「別に―――人間で言う独り言―――」 なんか長門の喋り方にいつまでも違和感を感じているのだがどこがどうおかしいとはっきり指摘も出来ない それにしても何か聞かれたくない独り言だったのだろうか・・・? 「なぁ、長門」 「何―――」 「やっぱり、お前どこかおかしいぞ?ほんとに異常は無いのか?」 「―――」 無言の中にはっきりと違和感を感じた。おそらく長門は何か隠している 俺はそう感じ取った 「なぁ、喋れないことがるのか?」 「違う、うまく言語化できないだけ―――私の中で整理は出来ている。だが喋るには時間が掛かりすぎる―――」 「じゃあ、三時間後の戦いが終わったら、俺があとでゆっくり話を聞いてやる」 「―――galf htaed」 長門の言った謎の言葉 俺に意味を知る術はない だがなんとなくその言葉に悲しいと言う感情が含まれている気がした 結局それ以上は聞き出せず、部屋に戻り戦いの準備を始めた その後鶴屋さんによって作戦会議が開かれた 鶴屋さんからの説明によると 敵の主戦力は電波によって動く人形ロボットだそうだ 小型汎用人型兵器と言うのが分かりやすいだろう。人造人間ではない 人間同様武器を持ち、動きも滑らかで人間とほとんど変わらないそうだ 目的や用途によって大きさや形が変わり、要塞などを守るロボは身長は十メートルを超えるものもあるという。 だが費用削減のため普通は人と同じくらいか若干小さいらしい もちろん操るためには人と電波塔が必要で 修理のための工場や弾薬庫も電波塔の根元に集中してるため、実質敵の拠点だ ちなみに人一人に対して約五体のロボを動かすのが普通で 単純に考えて五倍の戦力が見込める なかには三十体の部隊を動かすばけもんもいるらしい 鶴屋さんの分かりやすい説明をさらに分かりやすくすると 性能は人間とほぼ互角 頭に計算に使うマザーボードと 胴体に動力元 それと装甲もそこまで硬くないらしい ここまでずっと喋ってきたが、俺たちが迷い込んだこの異世界は設定として中世ヨーロッパであることを忘れないでほしい 未来か、ここは 一通り話は終わり 鶴屋さんから武器を支給された さすがに俺たちの武器では無理にもほどがあるらしい まず古泉には弓からドラグノフ狙撃銃へ。何でもSVDとか呼ばれているらしい 朝倉はナイフからAK-47へ。どこかで見たことある銃だな・・・ 鶴屋さんはシングルアクションアーミーを装備した。渋いな 長門に至ってはガバメントとチャフグレネードである。チャフは敵の混乱を招くために使うらしい どこかに潜入できそうな装備である 音が大きくて潜入には向かないだろうが あれ?俺の分は? 「ごめ~ん、用意できなかったにょろ~」 なっなんですとー!? 「ガチャガチャリロードガバメント☆ この銃にこめた弾薬~♪ 狙ってもっと真剣に 発砲!装填!命がけ!」 それにしてもこの長門ノリノリである まあ俺は剣以外武器をまともに触ったことがないから 多分支給されても使えないだろう。 おそらく他のみんなも・・・ 「いやぁいい銃ですね。スコープも覗きやすいし、しっかり手入れされている」 古泉が手馴れた感じで銃を扱ってやがる 「機関の方で少しだけ触ったことがあるんです」 何してんだろうな機関はそんな物騒なもん持って 他のやつもそれぞれの武器を整備してる まぁこいつらは普通にどんな武器渡しても使いこなしそうだ ちなみに俺はさすがに剣だけじゃつらいだろうと、 鶴屋さんが戦車五台を動かす権限を与えてくれた ちなみに戦車もロボになっていて、隊長のいうことを絶対に守り、 音声で命令を聞くようになっている たとえば「三時100メートルの方向に砲撃!!」というとちゃんとその地点を砲撃するようになっている やれやれハイテクにもほどがある 鶴屋さんの情報によると、 ハルヒ(偽)軍は北西20キロの森の中にある電波塔を拠点に こちらに進軍。 戦力として約1000体のロボと約30台の戦車がこちらに向かってきてるらしい 一方こちらは約10人の人間と約50台の戦車である 勝てるのか?これで 「戦術によっていくらでも覆るにょろ!!」 どこからそんな自信が出るんだろうね そして今日始めて暗い顔して人魂浮かべた幽霊が登場するところでこの話は次回に続くのである 幽霊だけに影が薄いってレベルじゃないんだな 第三章三話「unknowは彼女なのか?」 さて戦争の舞台となる平野に来た俺たちは、ずっと向こうに白い点がいくつもあることに気づいた おそらくあれが敵だろう 鶴屋さんからもらった双眼鏡を覗くと 白いロボットが銃を持って隊列を作って待ち構えていた あれと戦うのか 「この距離じゃ砲撃も届かないにょろね。戦闘の準備と状況を確認しておくにょろ」 地図を書いてみた。こんな状況だ 森森森森森森森森森森森森森森森 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平ロロロロロロロロロロ平平 森平平ロロロロロロロロロロ平平 森平平ロロロロロロロロロロ平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森川川川川川橋橋橋川川川川川川 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平平平平平平平平平平平 森平平平平長キ車車車平平平平平 森平平平平朝古鶴車車平平平平平 地図を見れば分かると思うが橋の付近が激戦区になるだろう 幸いあちらには戦車は無いので こちらの戦車で砲撃しつつ地道に減らしていけば 勝てなくはない 「私の銃の威力見せて上げるにょろ」 「撹乱は得意、任せて――――」 「突撃すればいいでしょ?」 「後方からの援護はお任せください」 「あんたたちに任せておけないわ!どうせ死なないんだし突っ込むわ!!」 誰が何を言ってるのかはおそらく分かるだろう というか居たのか、ハルヒ 「なんだか最近、誰かの陰謀を感じるわね。」 誰かとはいわないが誰かがハルヒのことを遠ざけてるとしか思えんな まあ戦闘の準備は整ったわけで、 前衛はハルヒ、朝倉、俺 後衛は古泉と俺率いる戦車 鶴屋さんと長門は横の森から奇襲をかけるらしい あと敵の数だが90~100位居るのが確認できた 一人あたり15体ぐらい倒せってことか? ちょっときついな 「戦争は変わった、一つの時代が終わり、俺たちの戦争は終わった」 あれ?新川さん、なんで銃なんか持ってるんですか? 「だが、生存確率じゃこっちの方が高いんじゃ―!!」 M63(軽機関銃)持ちながらの特攻はどう見ても死亡フラグだ!! 「仕方ありません。私も行くしかないようですね」 あれ?森さん?どうしたんですか?ボウイナイフ(投げナイフ)なんか持って それに横に居る、やけに露出の高い紅白な巫女と とんがり帽子と箒を持った白黒魔女は誰ですか? BGM「恋色月時計の綺想曲」 何ですか?この音楽!? カオスってレベルじゃないぞ! 「久しぶりの戦いよ!!某艦長も満足するくらいの濃い弾幕を放つわよ!!」 目の前にナイフと針と極太レーザーが展開され30体位消し炭になっていくのが確認できた あれ?よくみると森さんの横の二人、足がない!! 「同じ匂いがするわね・・」 ハルヒがいうとみょんに説得力があるから困る 一方橋の手前で新川さんは装填数の多いことを生かして10体くらいまとめてヘッドショットを食らわしてた あれ?新川さんの背中に張り付いてるのは朝倉か? 朝倉も負けず劣らず敵をヘッドショットしてた というかあの戦い方はすぐ弾がなくなるよな・・・ 援護しに行かなきゃ 「朝倉さんのところに行くつもりですね?援護します」 ドラグノコフを構えた古泉が頼もしい 「西の森の中に多数の伏兵が確認された。私が撹乱する」 そういうと左に走りチャフグレネードを森に投げ込む 爆発音がした後、無数の軽い金属片があたりを漂う 「私も援護するにょろよ!」 鶴屋さんも走っていく 「世界で最も高貴な銃、シングル・アクション・アーミーの威力を見せて上げるにょろ!!」 そういうとおもむろに近くの木に発砲し始めた どこねらって・・・ どどどっどどどどどどどっどどどどどおどどどっど あれ?六発の弾が終わるまでに20回ほど爆発が聞こえたんですが・・・ 長門のほうを見ると銃を構えてないどころかホルダーにしまいっぱなしにしてる 「私には弾の気持ちがわかる。跳弾を操ることなど造作も無いことにょろよ」 何言ってるのー―!? 「道が空きました!いくなら今です!!」 古泉の掛け声で前方を見ると 橋の手前側には見事に敵のロボがいなくなってるのが確認できた 「私のリロードはレボリューションにょろ!!」 という声を横に聞きながら 朝倉と新川さんの援護に向かいに行く 今度リボルバー・ニョロットとでも呼んであげようかな 新川さんの近くに行くまで気づかなかったが いつのまにか橋の向こう側で 激しい弾幕勝負をしている少女(?)三人がいるのが見えた ピチューン あ、被弾した まっいっか、なんか元気そうだし、あと三、四発は耐えてくれそうだ 森にいた伏兵も含め七十体ぐらい破壊されたのを見てたのだが よく考えると俺まったく活躍してないな 「ちっ、弾切れか!」 「こっちもよ!」 目の前の二人がこれ以上戦えないみたいなので代わりに戦うか 「橋の向こうのロボにたいし砲撃!!」 川越しに戦車の砲身がロボに向き砲撃を開始する どぉんと言う音とともに20体くらい吹き飛んだ 耳栓持ってきてよかったわ。砲撃音をまともに聞いたら鼓膜破れる *実際の戦場では銃の発射音で鼓膜をいためます 砲撃のさなか爆風を潜り抜けてきたロボたちが橋を渡ってこちらに突っ込んできた 何発か銃弾が鎧をかすったが 傷一つついてないのをみると 直撃しても平気だと判断し 先頭きって走ってきたロボの頭を切り落とし 銃を奪うと 剣をしまいロボに向けて発砲。 とりあえず橋の上のやつらは排除したところで弾が切れた 「お見事!」 いつのまにか弾の補給を受けていた新川さんから誉めてもらった 一方橋の向こうでは森さんと巫女と魔女が 三角のフォーメーションをつくりまとめて挟み撃ちにしていた 真ん中に居るのはハルヒかあれは? なるほどもう死なないことを利用して あえて弾幕の中で戦って三人が撃ち損ねたロボを確実に倒しているのか 「ゴットノキワミ、アッ――――」 神人が二人出てきて同時に攻撃した あんなことも出来るのか そーなのかー 一瞬何かが俺にとり憑いた気がしたが気にしないでおこう とりあえず橋の向こうは平気そうだ 仮に橋を渡ってきても朝倉と新川さんが対応してくれるだろう さて長門とリボルバーニョロットは? 振り返ると 発砲&高速リロードを繰り返す鶴屋さんと 正確なヘッドショットを決める長門の姿が見えた 敵はというとチャフグレネードがきいたのかまったく統率の無い動きをしていて 格好の的になっていた いいコンビだな。 この戦いはもう勝ったも同然になっていた 「森にいた伏兵の殲滅を完了―――」 長門の無機質な声が無線から聞こえてきた 「平原の制圧がほぼ完了した。残存戦力の殲滅に向かう。」 橋付近で戦ってた新川さんが無線を入れてきた 「待って、新戦力の発生を確認―――橋の向こうの森からかなり大きい熱量を持った物が数体がこちらへ向かっている」 向こう側の森か、鶴屋さんが言ってた戦車か? 森の中から出てきたのは予想も出来ない物だった 「なんだありゃあ!?」 木をなぎ倒しながら進んできた三つの物体に声をあげるほかない 幅4m高さ4mぐらいはあろうかという巨大な戦車が現れたのだ 戦車ってレベルじゃねーぞ!? 「あなたたちにこの三大戦車と戦えるかしら?」 聞き覚えがある声が無線から聞こえてきた 「黄緑さん!?王族護衛隊のあなたがなぜここにいるの!?」 朝倉の驚いた声が割り込んでくる 「答える必要はないわ。あなたたちはこの平原で爆死するんですもの」 「5機の飛行物体を確認―――爆撃機―――」 BOM「爆撃5機の波紋」 次回、 被弾「そして誰もいなくなるのか?」 第三章四話 被弾「そして誰もいなくなるのか?」 「爆撃機ってどういうことだ!」 「そのままの意味―――こちらに対空装備がないことを理由に一気に攻めてきた、他にも大量の熱源がこちらに向かっている」 「別の場所にいた歩兵か、合流されたら厄介だぞ」 「あの戦車の弱点は速度、装甲を分厚くするあまり動きが非常に遅い」 「じゃああれは主砲と機関銃に気をつければいいのか?」 「そう―――、でもこちらの戦車や武装では完全破壊は無理、武装を破壊して無力化するのが最善だと思われる」 なるほどな、戦車砲の直撃を受けないように気をつけなければ 「空は任せて!爆弾なんか落とさせるものですか!」 森さん、紅白巫女さん、黒白魔女さんが空に飛んでった 魔女さんは箒に乗ってるからまだ飛べるのは分かるが(分かりたくないが) 腋を露出してる巫女さんと瀟洒な森さんはどうやって飛んでるのだろうか・・・ 「私も空の援護をします。彼女たちが撃墜されたら空の守りががら空きですから」 今思ったんだがスナイパーライフルで飛行機って落とせるのだろうか・・・ 鶴屋「残った敵兵は任せて!シングルアクションアーミーの威力見せてあげるわ!」 朝倉「戦車無効化に参加させて、あれは私が落とすの!」 長門「チャフを投げ込む、これで撹乱が可能かと」 新川「あの手の兵器は何度も相手にしたことがあります。お任せください」 それぞれが散開し持ち場につく 長門がチャフグレネードを敵戦車付近に投げ込んだ かなりの遠投をしたな長門 チャフが炸裂しあたりに無線を撹乱する金属片が舞う ん?敵戦車の砲身がこちらを向いて・・・ 長門「危ない―――避けて―――」 長門の大きな声につられて思わず俺たちは飛び跳ねていた 大きな音が聞こえ爆風で一瞬ひるんだあと、やっと状況を確認できた 俺たちがいたはずの場所に大きな穴があいていた 長門「チャフが効いていない―――何故?」 無線を使ってあれを動かしているならここまで正確な砲撃を出来るはずが無い ハルヒ「あれに無線を受け取るためのアンテナがないわ!どんなに小さくしようとも、どのロボットにアンテナはあったもの!」 長門「あれは人間が操縦しているかそれに準ずるものが乗っている・・・」 黄緑「ご名答♪さすがインターフェース、情報解析能力はずば抜けているようね」 戦車の一台から黄緑さんが顔を出した 黄緑「残り二台も最新式の人工知能を積んでるからチャフなんかでかく乱しようとするのは無駄よ!」 まじか、あの三台の動きを止めることが出来ると思ったんだが 長門「まずい、一箇所に集まるのは危険すぎる、これからは別行動を推奨する」 すでに鶴屋さんと古泉は別々の場所にいて砲撃を受けるのはないと思われるが 俺と長門がいるこの場はやばい 俺たちも二手に分かれた 新川「一台の機関銃部分を無効化に成功した、主砲の破壊に取り掛かる」 速いな・・・ロケットランチャ―らしきものを担いでいたがそれを使ったのか? 森「あなた達の時間も私のもの・・・ 現代の兵器に勝ち目は、ない」 俺は思わず空を見上げた 爆撃機が一台炎上している。 そこに見える三人の少女 森「いっけー!!」 爆撃機が森林をめがけて墜落した 森「お掃除続行♪」 唖然とした こいつら人間じゃねぇ! 黄緑「くっ、まだ主砲ともう二台残っている!」 一台がスピードを上げてこちらに向かってきた やばい、狙われてる! 力がほしいか? またおまえか、前の章みないと読者には分からんぞ まあいいが、目の前の状況どうにかできんのか? やろうと思えば核搭載型歩行戦車のセンサー破壊できるぞ ほかには銃弾を弾いたり・・・、蛇にプレゼント贈ったり・・・ 俺は戦うための道具じゃないぞ、戦うことでしか自分を表現できないのか? 自分の意志で戦ってきたがなにか? もういい、目の前の戦車だけ任せる ソレからの俺の行動は速かった 機銃の合間をすり抜けたと思ったら その機銃を斬り落とし、 主砲も真っ二つに折った おれも二人いた気がしたが、気のせいだと信じたい 二人目「斬れぬものなどあんまりない!」 二台目が沈黙した 黄緑「バッ化け物・・・」 馬鹿でかい戦車用意したあんたには言われたくないな さーて他のやつらは? メイド森さんと紅白巫女さんと白黒魔女さんはあいかわらず爆撃機相手に ナイフと札と魔法で弾幕ごっこを繰り広げていた どうしてダメージがとおるんだ? 古泉は・・・何だあの紅い槍!? 古泉「紅い館に住んでいた吸血鬼の力をこんなにも月が紅いから見せてあげますよ!」 夕方でもないのに月が紅い!?ていうかこの世界の古泉高優遇だな・・・ 爆撃機を貫く紅い槍はまさに神槍である 森「今日も古泉様は美しい・・・」 森さーん!鼻血鼻血!! 長門は・・・ 長門「昆布だし効いてるよ―――かつおと昆布のあわせ技―――」 うーん・・・すっかり某動画サイトの虜になってるな・・・ チャフで撹乱したり、銃使ったりとあの兎そっくりだ ロボ歩兵に大して抜群の相性を誇るな・・・ 朝倉は・・・ ナイフを取り出し機銃の合間を抜けながら 歩兵を切りつぶす 黄緑「なぜだ!なぜ死なない!?」 朝倉「あいにく地獄が満杯でね・・・」 恐ろしいな、単騎でも戦場を制圧できるぞ 新川さんは・・・ 黄緑「アラカワ!まだだっ!まだ終わっていない!!」 新川「キミドリー!!」 兄弟げんかを繰り広げていそうな二人である 新川「スティンガーをくらえ!」 黄緑「うおまぶしっ!」 鶴屋「戦闘中のリロードがたまらない。銃に命を吹き込んでいるようだ。」 いくら使いなれてるからって正直リボルバーは扱いにくいと思うのだが… 跳弾による複数撃破のおかげでいくらでもリロードできるようだ さすがリボルバーニョロット 間違いなく世渡り上手 ハルヒ「どうも幽霊の性か私の存在感が薄いわね…」 相変わらず歩兵相手にミニ神人をスタンドにオラオラしてるようだ 存在感の薄さは…周りが濃すぎるだけだろう 幽霊特有の影の薄さもあるだろうが 黄緑「切り札投入したつもりだったけど甘かったようね・・・」 黄緑さんが用意した戦車は一台以外被害を受けており 一台は機関銃部分が破壊されほぼ固定砲台と化している もう一台もおれが再起不能にしたところだ 上空に飛んでいる爆撃機も戦闘機に追われるように 巫女さんと魔法使いとメイドさんと吸血鬼とSTGしている 爆弾も落ちてきてはいるが見てから回避が余裕なのであまり気にしていない それだけ上空の守りが厚いということだ 黄緑「だがもう遅い!わが軍最大の戦闘ユニットが到着した!!」 なん・・・だと・・・? 鶴屋「こっちですごい地響きがするにょろー!!」 無線越しにあわてた声が聞こえる 黄緑「わが軍の開発部が(勝手に)開発した巨大カメ型生物兵器バルキャノンよ!」 でけぇ!? なんだあの大きさは! とても力押しで 勝てる相手ではない やつの弱点を考えて戦わないと 確実にこっちがやられる…!! 誰か御乱心よんでこい! 次回第三章第五話「ンンンーーーッ!!」続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1555.html
「二人のハルヒ 第2部」 さて、土曜日の不思議探しは無事に終わって二日後…つまり、月曜日である。 あと一週間で夏休みだから、生徒達もブーンするかのようにハイテンション上がりずつある。 やれやれ、こりゃあ…二学期最初になると、死人のように帰ってくるだろうな。 「おはよ、キョン」 「あぁ」 いつもの挨拶会話。 ハルヒは何かを企んでるかのように目がキラキラ輝いてる。 「ねぇ、キョン!聞いて!夏休みまで一週間しかないのに、新人の先生が来るらしいよ!」 何だって?一週間しかないのに新人の先生? あり得ない話だ…うん、あり得ないね。 「ちょっと~キョン!これオカシイよね!」 はいはいオカシイオカシイ。 「…あのね…」 と話してる間、あの憎ったらしい先生が来た。 あのハンドボールバカの岡部である。 「えー、早速だが…俺の体の調子が悪く、引退する事になった…」 クラス一同、騒ぐ。 ほぉ、良かったな…引退出来て。 「…と言う訳で、代わりに新人の先生が担任になってくれるそうだ」 そういえば、新人ってどんな人なんだろうな…。 「聞いた話によると、女の先生だって!」 教えてくれてありがとう。 「入ってくれ」 「はい」 んー?どこかで聞いた声だな…。 何だっけ? と思ってる内に、教壇の所を見た。 「始めまして、英語担当の鈴見ハルカです!よろしく!」 ガンッ! 俺は、近くにある窓にぶつかった。 「ん?どした?●●●●」 「…何でもないです」 クラス全員、俺の所へ注目浴びた。 そりゃ、そうだ…俺は、物凄くすっこけたからな。 おー、イテェ…血出てないよな? 昼休み、非常階段にで 「…で、何でこんな所にいるんですか?ハルヒさん」 「んー、何の事かなぁ?」 「誤魔化さないで下さい」 「あー、分かった分かった…あのね、この時代で生活するのに仕事が必要なの」 つまり、職業症ですか? 「うーん、まぁ…それに近いわね」 と、ケラケラ笑うハルヒ(大)。 「あら?キョンとハルカさんじゃないの?」 上から声掛けた主は、ハルヒ(小)である。 「あら、ハルヒちゃんじゃないの」 「何の話をしてたの?」 俺にフるなよ、ハルヒよ。 「ただの世間話さ」 「そうなんだ…あ、ハルカさん、教えが上手かったよ!」 「あははっ、ありがと!」 ふぅ… 二人には聞こえないように溜息した。 ハルヒ(小)とハルヒ(大)を比べると少し変わったな。 未来って何があるのかな、ハルヒさん教えてくれないかな。 ま、そうは簡単に教えないか。 「ん、何よ、キョン!あたしの顔に何が付いてるの?」 「んぁ?何も付いてないさ…考え事してたんだよ」 「あ、さてはイヤラシイ事考えてたでしょ?」 「んな事考えてねぇよ」 「怪しい~」 たまには、こういう会話は悪くないな。 ハルヒさんだって、同感だろ? ハルヒ(大)サイド 懐かしいわね、あの頃の私とキョン…。 いつも、迷惑かけてたっけ。 「ハルカさん!もうすぐ、チャイムなるので戻ります!」 はいはい、いってらっしゃい。 「待ちなさーい!バカキョン!」 私は、この時代のハルヒとキョンを教室へ帰ったのを見届ける。 「…あの頃の私は、変わりたがったと思ってたな」 小学校の時、ある野球場で人が多くいた事でショック受けたな。 その後、私はつまらない生活送り始めた。私は、思ってた…少し変わりたいと…。 でも、変わらなかった…高校になるまではね、高校に入って、ある人に会った。 それが、あなたなのよ…キョン…忘れもしないわ、あれは××年前の七夕だよね。 あなたがこう言ってた「ジョン・スミスだ」とね。 それが、あなただよね…。 私は、嬉しかった…あなたと会えて…。 高校入学して間もない頃、SOS団を設立してキョンと一緒にやって来たよね。 勿論、仲間である古泉君とみくるちゃんと有希もね。 …色々あったわ…みくるちゃんにコスプレしたり、不思議探ししたりしたよね。 「それにしても…」 私は、周りを風景を見回す。 「懐かしいね…あの頃は」 その時、私の目から涙が出た。 「あら、何で涙出てるのかな…はは、何でだろ」 私は、未来人だから。 この先の事は知ってる。 辛い思い出や楽しかった思い出などあるから。 私は、何のために生きて来れたかな…。 誰のために? キョン? キョンのために? あぁ、そうだ…。 キョンのために生きて来れたんだ…。 私は、キョンにとって大切な恋人だから、生きて行けたんだな。 でも、そんなに悩む事は無いわ! だって、未来は結婚してるし…。 「あいつもいるから…」 私は、目を瞑って思った。 キョン…忘れないで。 あの頃の私は、勇気無かっただけなの。 だから、嫌われたりしないでね…。 「……」 私は、目を開け、青空を見た。 キョン…あなたは、私の……だからね。 「はぁ、泣いてスッキリした!さて、仕事に戻らないとね!」 それに、早く決着付けないと…世界が危ない。 朝倉…あなたは何を企んでるの。 第2部 完 第3部
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6137.html
第六章 虹色に輝くオーパーツ。その光がやみ終える。 「変な気分だ」 「ええ、無理も無いでしょう」 部室を出て、二人は長門の住むマンションにと向かった。ここ数日分のの記憶が二つ存在している。むこうの世界の俺がそう判断したんだからしょうがない。こうなることが分かっていたら、俺はどうしていただろう。くだらないことしか思いつかない。同時刻にチェスと将棋で古泉を打ち負かしてやるってのはどうだ。 こっちの世界・・・正規の世界では俺は無様にも何もすることが出来なかった。長門が倒れている中で古泉や喜緑さんに頼りっぱなしだった。しかし向こうの世界では少しは貢献できただろう。しかも今回は長門と古泉が毎度のように奔走する中、あの朝比奈さんが許可なしでは禁止されている時間移動をしてみんなを助けに来た。そしてSOS団に対する俺の気持ちが分かったような気がする。そう考えると同じ記憶を持つってのも悪くない。 オートロックを開けてもらい、長門の部屋の前に着いた。玄関のドアを開けると、奥から話し声が聞こえる。どうやらいつも通りの会話が聞こえる。にぎやかな話し声だ。 部屋に行こうとすると向こうからハルヒがやってきた。 「ちょっと遅いわよ。それよりも早く・・・」 分かっている。それ以上は言わなくてもいいんだ。俺は体験して確認できているんだからな。 扉を開けると、寝ていたそいつはこう言った。おいおい逆じゃないか?お前は俺の妹みたいなことを言うな。 「・・・ただいま」 長門は体を半分起こしている。 「ちょっと有希、まだ無理しちゃダメよ。まだ治ってないでしょ」 ハルヒは言葉では心配しているが、心では安心しているのだろう。長門の顔をみる限り寝込んでいたのが嘘だったようにケロッとしている。それを見れば気づくのだろう。もう無事だと。古泉と朝比奈さんも良かったとつぶやいている。 長門が無事と分かればハルヒはあれやこれやと話し始める。 「本当に心配してたんだから」 とか、 「体調を崩し始めたらすぐあたしに言いなさい。団長命令よ」 とか。長門はそれをただ聞いている。ハルヒは早速作ったおかゆをたべさせようとする。普通の病人ならそう簡単に食えやしないだろうが。がっつきすぎだぞ、長門。 喜緑さんは長門の無事を確認できたからなのか、 「少し用事がありますのでお暇させていただきます。今晩の看病は引き続きお任せください」 と言って出て行った。情報統合思念体に報告でもするのだろう。 その後俺たちはしばらく長門の部屋にいた。何をしていたかと言うと、珍しくハルヒと長門が会話をしていた。とはいってもハルヒが長門に一方的に話しかけているだけで、数分おきに長門が 「・・・そう」 「・・・分かった」 とつぶやき、はたまた、 「・・・・・・・・・」 無言で会話をしているように見えた。心なしか長門は嬉しそうだった。古泉や朝比奈さん、喜緑さんは黙ってそれを見守っている。 俺はというと・・・これからやることを整理していた。まだまだやらなくちゃいけないことがある。だけど少しくらい先延ばしてもいいよな。今日くらい久しぶりのSOS団を満喫してもいいじゃないか。 「やばい、忘れてた」 「何言ってるの、キョン」 「ちょっとレンタルDVDを返し忘れてた。悪い、今日は先に帰る」 ハルヒのギャーギャーいう声が聞こえる中、部屋を出た。早くオーパーツを鶴屋さんに返さないとな。またどこかに忘れたりなどしたらまずい。玄関に行くと喜緑さんが立っていた。 「お薬をお持ちいたしました。特効薬です」 いかん。こいつも忘れてたな。そのフォロー助かります。 さっそく鶴屋家へと走る。ほんと走ってばっかりだな。 何度見ても荘厳といえる家だ。インターホンを鳴らす。鶴屋さんが門まで来てくれた。 「やあ、それはもう必要ないのかいっ」 「ええ、助かりました。ありがとうございます」 今回はこの人だけでなく、鶴屋家のご先祖様にまで助けられたな。 「じゃあこれはまたうちで保管させていただくよっ。それよりもキョンくん。答えは分かったのかなっ」 このお方は何かが起きたって分かっているんだな。 「まあキミの顔を見れば分かるっさっ。少年、大使を持つにょろよ~」 ええ。既に大使は身につけてきましたよ。 家に帰ると妹が玄関にやってきた。 「ただいまー」 おう、おかえり。今日は間違えずにすんだな。 夕飯を食べ、自分の部屋へいった。ベットに寝ころがりながら考える。明日やるべきことを・・・ 翌日、水曜日。 自分のクラスに入るとハルヒがすでに来ていたようだ。 「昨日は悪かったな」 「悪いも何も、あんたはもっと部員を心配しなさいよ」 「分かってるって」 どうも昨日俺が帰った事で不機嫌らしい。 「有希、今日は学校に来ているわ。熱も下がってすっかり治ったみたい」 「会って来たのか」 「そうよ。きっと喜緑さんの特効薬が効いたんだわ」 まあそれだけではないだろう。お前が昨日ずっと居座って長門と話をしてたんだからな。長門も安心したんだろう、自分の居場所を確認できて。 昼休み。弁当を即効で食い終え、部室へと行く。そろそろこの不摂生が何かの病気にならなければいいが。 「どうぞ」 「お待ちしておりましたよ」 部室には古泉と朝比奈さんががいた。珍しく長門がいない。 「あなたはどこまでご存知ですか」 「さあな、さっぱりだ」 「それでは僕が」 またこいつの仮説を聞かなくちゃいかんのか。できれば長門に聞きたかったんだが。いや、二人いた方が分かりやすいか。 「僕が二つの記憶を持ち合わせていること、またあなたや長門さん、朝比奈さんの話を思い出すと、先週の土曜夜に世界は分裂してしまいました」 ああ、そうだったな。 「我々の記憶上で残っている世界をα、結果として存在していた世界をβとします。長門さんや喜緑さんが分裂した事を気づけなかったのは、九曜と言う宇宙人の仕業でしょう。α、βの両世界において妨害していたようです」 結局、九曜というやつのもよく分からなかったな。 「ええ。いくつかの能力において、長門さんよりも上位にあるようです。ただし意思というものがないのでしょうね。今後なにをするのか予想がつかないのは脅威ですが、恐らく単独で行動することは無いと思います。涼宮さんの能力に興味を持っているのですが、どうしたらよいか分からないといった感じでないでしょうか」 現に長門は倒れてしまったんだ。脅威だろ。 「そうとも限りません。喜緑さんがいますでしょう。今回のことで喜緑さんはよりいっそう警戒しているようです。僕が直接聞きました。二人がそれぞれ補っている限り、攻撃してもその時は回避できるはずです。九曜さんが長門さんに直接攻撃してきたのはβの世界です」 「じゃあαの世界の敵は藤原ってやつなんだな」 「その通り。彼があなたを利用して涼宮さんから佐々木さんへ能力を移し変えようとしたようです。もっとも移し変えようとしたのではなく、涼宮さんの能力をもともとなくそうとしたのではないかと。朝比奈さんの未来とβ世界の長門さんを人質にとって」 そこで朝比奈さん、あなたのおかげで助かったんです。 「またいつかお願いしたいものですね」 古泉ちゃかすな。朝比奈さんが困っているだろ。そういや勝手に時間移動してよかったんですか? 「あのう、わたしどちらの世界でも未来と連絡を取れなくて。古泉くんの言うβっていう世界ではあきらめてたんです。でもαって世界ではダメもとでやってみたんです。そしたらできちゃって・・・今は、禁則なんですけど未来と連絡取れるんです。そしたら禁則ですけど・・・処分待ちだって・・・」 やっぱりいけないことだったのか。どうしたらいいんだ。すると部室のドアが開いた。長門がやってきた。 「心配する必要は無い」 その言い草は何だ。俺たちの会話はお前に筒抜けだったのか。それにしてもやけにおそかったな。どこいってたんだ? 「涼宮ハルヒの作成した弁当を共に摂取していた」 そこまでハルヒは面倒見ているのか。で、朝比奈さんはどうなるんだ?しばらく黙った後、長門はこう言った。 「大丈夫。いずれ分かる」 だからどう大丈夫なのか言ってくれよ。それとも言わなくてもすぐ分かるってことなのか?朝比奈さんが縮こまっているじゃないか。それでもその怪訝を気にする必要はないと言わんばかりに違う説明をした。 「世界を分裂させたのは涼宮ハルヒ。九曜と呼称される個体により、発見が遅れた。彼女は我々情報統合思念体と発祥が異なるため、攻撃方法も分析できなかった。また分裂の原因はあなたの友人である佐々木と呼称される人物。涼宮ハルヒは嫉妬と呼称される感情を持ち、佐々木と呼称される人物を消去した」 そういえばハルヒがやったんだよな。よりによって俺の友人に手を出すなんて。 「それは気になりますね。今後涼宮さんが同じようなことを起こすかもしれません。もちろん、あなたと涼宮さんが結ばれてしまえば気にかけることはないでしょうが」 だから古泉、その発言はよせよ。 しかし俺はハルヒがまた同じ事をするなんて思っていなかった。今朝ハルヒとした会話の続きを思い出す。 「長門が俺たちに寝込んでいることを言わなかったのは、長門なりに心配かけたくないってことだったんじゃないか。長門にも言いにくいことはあるだろうさ」 「まあ・・・それも分からなくもないわ」 「誰にだって言い難いことはある。そういうお前も俺たちに言えないでいることはあるんじゃないのか?」 そう言うと、しばらく窓の外を見てハルヒはこう返答した。 「そうかもね」 そして口ごもるようにこう続けた。 「・・・・・・あんたあたしに隠し事していない?例えば誰かと付き合っているとか。この前会った佐々木さんとか怪しいわね。例えばの話よ」 「お前、残念ながら俺がどれだけもてないのか分かるだろ。いる訳ない。佐々木と俺との間に恋愛感情などない。異性同士でも親友という関係が成り立つってのが俺の持論だ。仮に少しでも気になる異性がいたらだ。真っ先にお前に相談するよ」 同性の国木田とかに相談するより、異性のお前たちに聞いたほうが少しはためになるだろう。ましてナンパ成功率0.00・・・1%の谷口に相談するなんぞもっての外だ。 「それもそうね」 何か勝ち誇ったようにハルヒは俺に笑顔を見せている。 「そういうお前はどうなんだ。入学して一年たつんだ。彼氏を作る気はないのか」 「あんたには関係ないわよ」 「おいおい、お前は俺に隠し事するのかよ」 「・・・・・・あたしはそんなことよりSOS団のみんなと遊んでいる方が楽しいわ」 「それには俺も同意見だ」 はっきりと遊んでると言い切ったな。本来の活動内容はどこへいったんだ。 「ならハルヒ、悩み事があるなら俺たちに相談しろよ。もっともいえる範囲での内容でいい。俺だったら何でも言うさ。まして恋愛ごとに関していったら、SOS団には女性が三人もいるんだから。悔しいがこの学校ではトップクラスで異性にモテている古泉もいるんだ。俺たちに隠し事などない方がいいだろ」 「当たり前よ。SOS団に隠し事なんて不必要だわ」 もっとも、隠しておかなければならないことは隠し通すべきだ。いきなりあの三人が本性を語り始めたりすることはないだろう。それ以外のことだったら何でもいい。幸か不幸か、SOS団のみんなは一年間毎日同じ時間を過ごしてそんな間柄になっているに違いない。担任の岡部が教室に入ってきたところで、会話はそこで終了した。 回想終了。俺は確かめるべく、まず古泉に聞いた。 「そういうお前はどうなんだ。新学期になって早速下駄箱にラブレターなんてもの入ってたりしないのか?」 「いきなりどうしたんですか?・・・新一年生から何通かそのようなものを受け取りましたよ。でも今の僕にはそんなことをしている時間はないんです」 うまく紛らわそうとする古泉に、拍車をかけるように質問を続ける。 「じゃあ逆に気になる子とかいないのか?告白を断り続けているのも、既に意中の人がいるとかはないのか」 「・・・・・・そうですね、僕は機関の仕事で忙しいのでそのようなことを気にする時間はないんですよ。もっともプライベートの時間はこの部室や週末の野外活動で、あなたたちと過ごすことで満足してしまっているようです」 古泉はシロか。そう思いながら今度は女性に目を向ける。 「朝比奈さんはどうですか?あなたもたくさん告白を受けているのでしょう。この時代で恋愛してはいけないんでしたっけ?でも一つ禁則事項を破っているんですからもう一つくらいかまわないでしょう」 「いきなりなんてこというんですかぁ~。あっキョンくん、その顔はだまそうとしたんですね。いじわるです。好きな人がいるかどうかは・・・、禁則事項です」 やはりこの人は分かりやすい。残念そうな顔をしている朝比奈さんを見れば、そのようなことはないだろう。 「長門、お前はどうなんだ」 目を見開いてこちらを見ているように見える。なんてことを聞くんだって顔か? 「・・・・・・ヒ・ミ・ツ」 そりゃないだろう。少しくらいお前のプライベートを聞きたいもんだ。お前も中河以外から告白を受けたりしなかったのか? 「・・・・・・そのようなものを受けた場合、今の私だけで判断することは出来ない。情報統合思念体の見解が必要。またあなたたちにも見解を求める可能性もある」 ようするに親や俺たちに相談するって事か。 「お前たちのことは分かったよ。ハルヒにも今朝同じ事を聞いた。釘刺しておいたよ。あいつは俺に遠慮していたみたいだな。嫉妬かどうか分からないが、俺なんかを心配していたんだろう。これからはお互い隠し事はなしだって約束したさ」 俺はそのとき一つ見過ごしていた。さっきの俺の発言に対して反撃してくる可能性があるということを。よりによって古泉ではなく、朝比奈さんが反撃してきた。 「それで、キョンくんはなんて告白したんですかぁ?それとも涼宮さんに告白されたのかな。教えてくださぁ~い」 どう答えていいか考えているうちに、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。助かった、と思いきや三人が近づいてくる。くそっ、教室までダッシュだ。 「おや、逃げ足だけは速いんですね」 そう言う古泉を後ろにして、何とか教室へと戻ってこれた。 放課後、部室へと向かった。既に一人部室にいた。二日ぶりに、休みを入れると三日ぶりに五人揃って部室で活動できるんだな。長門が椅子に座り本を読んでいた。そういえばこいつに聞きたいことがまだあったな。 「そういや、俺が電話をかけただのかけてないだのってこと分かった気がするぜ」 「そう」 俺は確かに一方の世界では長門に電話をし、もう一方の世界ではしなかった。こいつの言ってたことと同じだな。しかし何だってそんなことになったと思っていると、それを見かねたのか、長門が説明してくれた。 「あの時間、あなたからの電話の電波情報が別の世界の私に発せられた。その原因も恐らく九曜と推定される」 「だから俺はお前が倒れていることに気づけなかったんだな。ひょっとして九曜は、言いにくいんだが、お前より強かったりするのか?」 「・・・情報統合思念体は未だ解析できていない。しかし今回のことからその可能性は否定できない。もしくは我々と九曜が持つ能力が別々に存在している可能性もある。お互い意思伝達が出来ないのもそれが原因とも思える」 後者の方がいいんだがな。また襲ってくるなんてこともあるだろ。 「私がさせない」 「私たちが、だろ。お前も今回のことで分かっただろ。一人で解決できなくともみんなの力で解決できることがあるって。少しは俺たちのことも信用しろよな。古泉の機関や朝比奈さんの未来勢力にとっかかりはあるかもしれないが、お前個人が危ないって分かったらみんな助けに来ただろ。古泉や朝比奈さん、それにハルヒのことも信頼してくれよ」 長門は沈黙の後、何かを確信したかのように言った。 「・・・・・・分かった」 残りの三人がやってきていつものように放課後を過ごした。いや、いつも通りではなかったな。俺と古泉がボードゲームをし、ハルヒはパソコンをいじり、長門が窓辺で本を読み、朝比奈さんがそれらを見守るようにお茶を汲んだりしていた訳ではなかった。古泉が持ってきた人生ゲームを五人みんなでやっていた。しかしまたしても奇妙なことが起きた。それぞれの職業が、ハルヒは総理大臣、古泉はマジック芸人、長門はNASA、朝比奈さんはタイムマシーン製造業なんてのにつきやがった。こんなゲームどこで作ったんだ。かくいう俺は、言わずとも分かるだろ、雑務係の万年平社員だった。 ゲームをしながらハルヒは不満げに呟いていた。 「なんで入団希望者が来ないのかしら。今年の一年はみんな腰抜けばかりね。もっと歯ごたえのあるのが来ると思ってたのに」 「まあまあそうあせるなって。そう簡単にお前の目にかなうやつは見つからないだろ」 「やっぱり去年のうちに目ぼしいのを探しておくべきだったわ」 下校の時間になり、五人は早々と部室を出た。 「あのゲームはなんだ、お前らの機関が作ったものか?」 「いえ、新発売の人生ゲームですよ。あの手この手やりつくして、奇抜な内容になってしまったようですね。まさかあんな結果になるとは思っていませんでしたよ」 古泉と下らん会話をしながら前を見ると、長門はハルヒと朝比奈さんに挟まれながら歩いていた。ハルヒと朝比奈さんだけ会話をしているように思えたが、時折、 「・・・・・・そう」 「・・・・・・うかつ」 という長門の声が聞こえた。よかったな、長門。 五人が解散した後、俺は一人喫茶店に来ていた。数分後、もう一人やってきた。 「待たせたね。宿題を先に済ませておこうと思ってね」 向こうの世界で顔をあわせた後、一度もあっていない佐々木が来た。昨日のうちに待ち合わせをしておいたのだ。 「キョン、すまなかった。先に謝らせてくれないか」 「謝るのはこっちだ。お前は散々な目に会っただけだ」 「一時の迷いがあったとはいえ、本当に悪かった。橘さんたちとはもう会わないことにするよ。少なくとも僕から会うことはない」 佐々木が席に着くなり、二人とも頭を上げ下げしていた。こうしてはおれん。コーヒーを注文してひとまず落ち着くことにした。 「ハルヒがあんなことをしないように確認しておいたから。安心して大丈夫だ。あいつに謝らせることはできなかったから、俺の方から謝るよ。本当にすまなかった。今後、九曜や藤原がお前襲ってきてもSOS団で助ける。だから心配するな」 「そうしてもらえると助かるよ、ありがとう。それにしても藤原さんがあんなことをするとは君も思わなかったんじゃないかな。さぞかし意表をつかれただろう。今回の作戦を提案したのは橘さんさ。彼女もなかなか策士だね」 やけに絡んでこないと思ったら、考えたのは橘だって訳か。確かに彼女の能力は佐々木の閉鎖空間に入ることだから、襲ってくるとは思わなかったが。 「僕が思うに、九曜さんは能力を移し変えることなんてできないんじゃないかな。もしくはやりたくないとか。彼女は最後まで理解できなかったよ。だから橘さんは藤原くんにお願いしたと言うわけだ。彼が未来人なら世界が分裂したことなどあらかじめ知っていてもおかしくはないだろうし」 確かに何も知らない向こうの世界で、いきなり藤原が襲ってきたときはビックリした。あの七夕に連れ去られるとは。かろうじて長門が反応して一緒に来れたことが救いだった。あそこに一人連れ去られていたら、朝比奈さんがくる前に精神が参っていただろう。 「一つだけ謎を推理したんだが聞いてくれないか」 「おや、めずらしいね。君の論説も久しぶりに聞いてみたいよ」 「佐々木、お前にも閉鎖空間があるって言っていたが、それは橘の嘘なんじゃないか?日曜お前の閉鎖空間に入ったんだが、十秒くらいで出てこれただろ。ハルヒのそれに入った経験からすると、閉鎖空間の時間は実際の時間と共に進行するか、それか時間はたたずに出てこれるんじゃないかって思って。あの時のは九曜に魅せられた幻なんじゃないか。だからお前にはハルヒの持つような力は存在しないと思う。でないと藤原のやつがした行動も矛盾することになる」 「なるほど、そうだとありがたい。君の推理も一理ある。何しろ僕がそのような力を持っていたくはないんだ。平穏な生活を望むよ」 「俺だってそうさ。それにハルヒはお前を消そうとだけしてたとは思えない。向こうの世界にだけ、SOS団にお前を含め入団希望者がやってきただろ。いくら藤原の時間移動で来れたとしても、それだけじゃハルヒによって拒まれるんじゃないか。お前を消そうとしたことに罪悪感を持ったんじゃないかって。だからお前は向こうの世界に異世界人としてくることができた。どうだ?」 「くっくっ、涼宮さんにおける君の信頼は厚いね。うらやましいよ。まあ君がそういってくれるだけでも僕は安心することができる」 ああ、そうに違いない。ハルヒが一時の迷いで人を消してしまおうなんざするはずがない。 「何はともあれ、今後ともあいつの行動には気をつけるよ。この前話してた同窓会の件だが、俺と佐々木で決めちまわないか。二人をお互い窓口にして。会うことはハルヒにも言っておくさ」 「そうしてくれると助かる。早く決めてしまいたいしね。何より息抜きになりそうだ。相変わらず僕の学校はみんな勉学に気を張り詰めてばかりだからね」 その後、俺は佐々木の話に耳を傾けつつ相槌をつくように会話した。久しぶりだなこの感覚。 「では同窓会の件は僕からみんなに連絡しておく。展開があったらこちらから連絡するよ。君の学校の人たちにも伝えておいてくれないか」 「ああ分かった。じゃあばた今度な」 二人は喫茶店をでて別れようとしている時だった。俺たちの背後にいやな気配がする。授業中にも感じる、あの刺々しい気配だ。 「あらキョン、こんなところで何してるの?」 なんだってんだ。この状況をこいつに見られたら、振り出しに戻ってしまうじゃないか。どうする俺。最悪だ。修羅場だ。女の修羅場が始まるぞ・・・こんな時に発せられる男の第一声ってのはなんとも情けなく聞こえるのだろう。 「あのな・・・お前なんか誤解していること言っただろ。この前佐々木と俺たちが会った時、お前つれない態度だったじゃないか。だから佐々木も気にしているみたいでな。だから今しがた、その誤解を解いてこいつにも理由を話していたわけだ。はははっ・・・」 ああ、俺の人生はここで終焉を迎えようとしている。せっかくあの場から戻ってこれたって言うのに。しかしその時、神の声が降り注いだ。 「なんだってキョン、君ってやつは。今日のことを説明してなかったのかい?涼宮さん、これを機に新たな誤解を生む必要はないよ。先日あなたに対してあまり良くない印象を与えてしまったみたいで気になっていたんだ。せっかくの出会いも第一印象が悪かったら人生を損すると思える。僕はあなたに対してそのような印象を持っていないんだ。しかもこれがいい出会いになることを望んでいる。それに彼と会うことは、中学の同窓会のことで話そうと僕から提案したことなんだ。どうか、気にかけないで頂きたい」 佐々木よ、お前に力がないなんて言って悪かった。お前は神だ。 「ふうん・・・・・・そう・・・・・・。ならいいけど」 「そうなんだよ。ハルヒ。じゃ、じゃあまた明日な」 ここ一週間で最も早く俺の脚が動いたのが、まさかこの時だなんて。情けないったらありゃしない。一刻も早くあの場を立ち去りたかったからだ。しかし、俺が逃げるようにその場を立ち去った後、二人が何か話していることに気づくべきだった。 そんなこんなで家に着き、夕飯を食った後、また外へ出た。 「どこに行くのー?お散歩?それとも彼女?」 「そんなんじゃありません。ちょっとコンビニにな」 「えー、いいなあ。キョンくんおみやげ買ってきてねー」 今日はやることが多いな。しかしそれを見逃すわけにも行かなかった。今朝下駄箱に手紙が入っていたからだ。 『今日の夜九時、いつもの公園で待っています 朝比奈みくる』 そうだ、今回の事件で何も絡んでこなかった、しかも小さい朝比奈さんに対しても何も連絡しなかったのであろう、もっと未来にいる朝比奈さんの呼び出しがあったのだ。 公園に着くと、朝比奈みくる(大)がベンチに座って待っていた。 「急に呼び出したりしてごめんなさい」 いや、いいんです。俺も聞きたいことが山ほどあるんです。あなたがどこまで話してくれるかどうかは分かりませんが。まず一番聞きたいことはこれだ。 「今回のことも規定事項だったんですか?」 そう尋ねると、言葉が詰まっているように見える。目に涙も浮かべているようだ。 「いえ・・・今回のことは私たちもあなたに委ねようとしていました。あの時、あなたがどの未来を選択しても納得するようにしました。それまでは干渉しないように決めていたのです。あなたにとって酷な選択でした。でもあなたのおかげで今、私や長門さんがこうして生きていられるのです。そしてこれだけは分かって欲しいです。そうすることしかできなかったの・・・」 酷だ、酷過ぎたさ。でもあなたはヒントをくれた。 「では今俺たちと時間を共にしている朝比奈さんについてはどうなんです?それにあのオーパーツはあなたのヒントだったのでしょう?」 「・・・禁則に関わってしまいますが、あの時の私に判断させることしかできなかったの。おかげで今私がいる未来では飛躍的に変わったことがあるの。時間平面移動について・・・それまでは許可なしにすることは禁止されていたけど、身の危険が迫った時はやむを得ず移動してもいいと決められました。他にも色んな制約はありますが、おかげで緩和されるきっかけになったの。あのオーパーツに関しては今回の事項においてどんな形であれあなたが思いだすことが必要でした。あの後すぐに発見するとは思いませんでしたが・・・」 朝比奈さんがあの場で時間移動したことが、この朝比奈さん(大)にとっての規定事項だったのだろう。ともすれば、これがきっかけで朝比奈さんの地位が上がるってことになるんだな。早く伝えてあげないと。・・・これも恐らく禁則事項なんでしょうね。そう言って彼女を見ると、頷いている。 「それで、藤原というあの未来人のことなんですが・・・」 「それ以上は禁則事項なのです。・・・ごめんなさい」 そう言って彼女は立ち上がり、 「そろそろ時間なの。でも最後にこれだけ言わせて。キョンくん、あなたのおかげでみんな助かることができたの。本当に感謝しています」 そして草薮の方へ消えていった。 俺の頭に二つの懸念がよぎる。恐らくあの藤原と言うやつは朝比奈さんのおかげで自由に時間移動することができたのだろう。それができなければ朝比奈さん(大)たちの手によって囚われの身になってしまう。そしてオーパーツ。あれは朝比奈さん(大)たちが作り出したものなのであろう。宇宙人が作ったとも考えられるが、長門や九曜を見る限り、わざわざ三百年前の人に渡して、それをこの時代まで見つからないようにするなんて手の込んだ事しないだろう。未来人が置き忘れたか、この時のために埋めさせたと考える方が納得いく。ともすると、朝比奈さん(大)のいる時代は四年前の時間振動など消滅しているのだろう。あなたのいる未来はすでにハルヒの力がなんなのか分かっているのですか? →「涼宮ハルヒのビックリ」エピローグ あとがきへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2381.html
集合時間をー夕方ーと設定していたため、部屋割りが決まった頃には外はもう暗闇の世界となり時計も8時を廻っていた。 『涼宮ハルヒのひなた荘 第3話 神様もう少しだけ』 部屋に荷物を置いてくるよう皆に促し、食堂に集まってもらった。 ちなみに…出征していた古泉も既に帰還している。 「実はそれ程苦労もしませんでした。どうやら“楽しみ”の気持ちが大きいんでしょうね」 と、帰還した際に超能力少年は大して必要でもない情報を残していったが… でもな、俺ですら楽しみにしてるんだぜ?あいつも楽しみに思うのは当然だろうよ。 食堂に集まった皆に対して、 「これからの食事は交代制でよろしく頼む」 そう伝えたところ、1名が不満の意思を表明した。精神的に大人な面々が集う中、その様に子供じみた態度をとるのは涼宮ハルヒであり、それが涼宮ハルヒたる所以だ。 「ちょっと!晩ご飯はまだ許せるとして朝ご飯を作る事になったら大変じゃない!ただでさえ1人で全員分用意するのは時間かかるのに!」 そりゃそうだろうな。俺だって1人で用意できるなどとも思っていないからな。 「ここには9人いるから3つのグループに分けてローテーションしようじゃないか。3人もいればなんとかなるだろ?」 「む…」 「そして一週間したらグループの編成も変えよう。みんなの交流も深まるぞ」 周りの顔を伺ってみるとどうやら満更でもないらしく、各々の仕草で肯定を表現していた。 「ところで今夜の食事はどうするの?今から作るたって買い出しもまだでしょうに」 「その件に関しては鶴屋さんだ」 待ってましたっさっ!と声を上げた鶴屋さんはハルヒのそばに近寄っていき不適に微笑んだ。 すまんなハルヒ。実は事前に打ち合わせ済みなんだ。 「ハルにゃんは何かを忘れてないかい?みんなが一堂に集まって最初にすることは何っさ!?」 鶴屋さんからの謎掛け。鶴屋さんの中ではどうやら人類が生まれたと同時にその習慣は始まっていたらしい。 「ええっと…」 いきなりの質問にハルヒも戸惑いの色を隠せないが、 「宴会っさ!」 “宴会”の響きで目を爛々と輝かせた。 宴会、と言うのも鶴屋さんから持ち掛けてきたことであり、俺はありがたい気持ちで終始頭があがらなかった。 先程までいた食堂は従業員専用のもので、少々狭い。そこで俺たちは宴会場へと赴き扉を開けたのだが… 目眩がした。 旅館と言うからにはほぼ全室が和室でありこの宴会場も例外ではない。 しかし、扉を開けた際に目に飛び込んできたのは執事服の新川さんと仲居の格好をした森さんだったのだ。 森さんはまだいい、というよりも最高です。髪はポニーテールを丸めた様に一つのお団子に纏められ白いうなじが見えていた。 問題は新川さんだ。和室に執事はどう見てもシュールだ。 ほれ見ろ。こんな事に慣れてない佐々木は軽くひいてるじゃねえか。 「おい、古泉」 「なんでしょうか?」 「新川さんはもっと別の格好ができなかったのか?森さんの衣装をチョイスした奴には大勲位菊花大綬章を贈呈したいくらいだがな」 森さんのうなじは本当にたまらなく、美しい。 「まあいいではないですか。執事服を着てこその新川さんですよ」 「…そうだな」 不毛な会話を切り上げる。女性陣は既に席に着いておりハルヒと佐々木の間が開いていたのでそこに座った。 「やあ、キョン。君の周囲は実にユニークな人ばかりだ。執事を見る機会など一生ないと思っていたよ」 「いや…あの人は特別だ。気にするな」 本当に機関とやらは何をしたいのかがわからない。 宴会の開催を言い出したのは鶴屋さんであり、その準備にはもちろん鶴屋家が絡んでいる。 つまり機関も一枚かむだろうとは予想できたはずだ。 俺はそこまで頭が回っておらず、新川さんと森さんの登場は完全に想定外だった。 橘は森さんの顔を直視できずに引きつった笑顔のまま佐々木の隣に着いている。 あの時に言った「森さんには二度と会いたくない」との事は本心だったんだろうな。 「ところで、キョン。こうして食事を共にするのも随分と久し振りだね。あまりの懐かしさにノスタルジーさえ感じるよ」 「そうだな。あの頃はほぼ毎日と言っていいほど昼飯は一緒だったからな」 と、俺も同意する。そして佐々木は嬉しそうに、特徴的な笑みをこぼし俺と向き合っていた。 「へえ?あんたたちってそんなに仲が良かったの」 俺の体は完全に佐々木の方を向いていたため背中の方から声が聞こえた。 その声の主、涼宮ハルヒはいつも俺と佐々木の会話に割り込んで来る気がする。 古泉に言わせれば俺と佐々木の関係について何かもやもやとした感情を抱いているらしいが… 「中三の頃は常に一緒にいたと言っても過言ではないな」 「へえ…そう、なんだ…」 ハルヒの語尾はどことなく落胆している感じがした。 「ま、そんなこと、どうでもいいけど」 その後、鶴屋さん…の文字通りの『鶴の一声』により宴会は始まった。 宴会と言うからにはお酒も準備されており新川さんが持ってきた日本酒を森さんがお酌して回っている。 橘がお酒を注いでもらってるとき、彼女は顔面蒼白になりながら手を震わせていた。 そして最後に森さんは、 「ごゆっくりどうぞ」 そう発した。ここからは森さんの表情は見えず、橘の… 「ひ、ヒィッ!」 なんて悲鳴から想像するしかなかった。いや、俺だって想像もしたくないがな。 次に佐々木が注いでもらっている。 「お前って酒飲めたのか?」 俺は疑問に思った事を言葉として発し、 「まあ、嗜む程度にはいけるつもりだよ」 の返答で一安心した。 佐々木にお酌し終えた森さんは俺の元へとやって来る。 「あの輩の監視はお任せ下さいませ」 あの『輩』とは橘の事だろう。森さんも未だに許せていないらしく少々怒気を帯びた声色だったので正直泣きそうになるが… でも俺は男として森さんに進言することにしよう。 「橘の事は俺に任せてくれませんか?あいつはもう俺たちには危害を加えないでしょうから」 そしてあの時に誘拐された朝比奈さんを見やる。今は鶴屋さんと食べさせ合いっこしてるらしい。 誘拐された時の記憶はなく、初対面時に橘とも簡単に打ち解けられていた。橘は気まずそうにしていたが。 「それに橘も女の子の1人なんですから」 なんて先日あった事を思い出しながらそう告げた。 「わかりました。でも何かあった場合には古泉にでも言ってくださいね」 そう言い残した森さんは隣のハルヒへと向かう。 ん?ハルヒにお酌だと? 「おいハルヒ。お前自分自身に禁酒法を制定してなかったか?」 「うるさいわね!別にいいじゃない!こんな日に盛り上がらないなんてどうかしてるわ!」 どうかしてるのはお前の頭じゃないのか?と言うのは心の中に留め、ハルヒの表情を盗み見る。メランコリックな雰囲気を醸し出してるのは気のせいではないはずだ。 「それに今日は飲みたい気分なんだから…」 「…そうか」 俺はそれ以上何も言わない。代わりに手にしているコップをハルヒのコップにカツンとぶつけ一気に呷った。 この室内にあった豪勢な飲食物は業績悪化が続く企業の利益曲線のようになくなっていった。 「アメリカの総司令官のワシントンは単身イタリアへと渡りキリスト教の布教を始めた。これが俗に言うフランス革命なんだ。この時に活躍した楠木正成が…」 飲食物の減少に貢献しているのは長門、ハルヒ、鶴屋さんであり給仕担当の森さんもせわしなさそうに動く。 「その後福沢諭吉は第2回三頭政治に参加。これによって四頭政治へと移行したわけだ。そこに黙っていられないアルタン=ハンはニュートンと結婚、後に…」 また橘はハルヒや鶴屋さんと気があったらしく今は3人で熱唱中だ。 「その後ローマではプランタジネット朝が成立。フランスのアンジュー伯爵がヘンリ2世として即位すると園芸農業を始め…」 喜緑さんは長門を見てにこにこと、古泉は新川さんと何か相談しているようだった。 さて、佐々木はどうしたかというと… 「フランスとアフガニスタンの冷戦が始まると人々は南北朝時代と称し…」 …酔っていた。 俺の記憶が正しいと佐々木はまだ一杯しか飲んでいない。なんでこんなに狂ってるんだ? 「キョン、聞いているのか?優秀な聞き手である君と会話できることは僕にも嬉しい事なんだ。なんたって君はいつも適度な場面で相槌をくれる。なのに、今日はどうしたんだい?」 どうかしてるのはお前の方だ、とは言わない。佐々木はまだ素面のつもりだろう。 だが口から発せられるものはデタラメ過ぎる歴史である。こんなのを真面目に拝聴してしまったら今後の学習に支障をきたすだろうね。 「俺は少し酔ってるみたいだ。お前も顔が紅くなってるぞ。水でも飲んで酔いを冷ませ」 佐々木は俺の手からコップを受け取り一気に飲んだ。すまんな。水じゃなくて日本酒だ。 「き、キョン…こ、これは、いったいどう言うことなんだ?普段は客観的にいられる自分もこ、今回ばかりは冷静に、い、い、いられそうにないよ」 「わかった。わかったからもう寝とけ」 そう言い放ち佐々木のおでこをポンッと押す。 「ふ、ふにゃぁ!」 すると佐々木らしからぬ声が発せられ畳へと倒れ込む。 俺は佐々木の頭を持ち上げて二つに折った座布団を差し込み、寝たことを確認すると1人でつまみながら再び飲み始めた。 どれくらいたっただろうか。宴会はそろそろお開きのようだ。 「もう限界です~」 と涙目になっている朝比奈さんに、 「まだまだイケるっさ!」 と鶴屋さんはブランデーを流し込もうとしている。 そんな2人を古泉は窘めそれぞれの部屋へ帰るように促した。 ベロンベロンに酔った橘は佐々木に抱き付いて夢の世界へと旅立っている。 喜緑さんは佐々木と橘に毛布を被せ、長門と共に自室に戻っていった。 寝ている2人を除けば、ここにいるのは俺とハルヒだけだ。 そして俺はハルヒのご相伴に預かっているわけだ。 「京子って良い娘よね。ちょっと抜けてるけど」 「ああ」 としか俺は言わない。 「佐々木さんも良い娘ね。ちょっとおかしいところもあるけど」 「そうだな」 としか俺は言えない。 「喜緑さんも…鶴屋さんも…」 「みくるちゃんも…有希も…」 「それから古泉君も」 「私の周りにはホント良い人ばかりね」 等とハルヒは感慨深げに語った。しかし肝心なことを忘れてないか? 「俺は?」 「あんたは除外」 ひでぇ。俺だってこの団の為にいろいろとやってきたんだぜ。ここで切り捨てられるのは酷すぎだろ。…だが雑用の身分としてはこんなの感じが心地良かったりする。 「ま、あんたには日頃の礼を兼ねてこのカシスオレンジを贈呈するわ」 とハルヒは唐突に飲みかけの缶酎ハイを突きつけてきた。 「ありがたく頂戴するよ」 俺は素直に受け取る。一瞬“間接キス”という単語が脳裏をよぎったが俺はそんな事は気にしないで一気に飲み干す。 そして先ほどよりハルヒの頬が赤らんでいるのは気のせいだろう、ということにした。 「そろそろ戻らないか?」 「そうね!明日の不思議探索に支障があるわ!」 と2人が共に立ち上がった時、ハルヒの足はよろめき俺の方へと倒れ込んできた。 女1人を受け止められないほど俺も柔じゃない。ハルヒの頭を胸で受け止め肩を支えた。 「お前、結構酔ってるじゃないか。そんなんで戻れるのかよ」 「ん、あっ、いや、だっ大丈夫よ!」 俺がそう訊ねるとハルヒは俺の胸からそう答えた。 大丈夫だとは言ってるが呂律も回ってないし、耳なんてさっきより真っ赤じゃねえか。 そこで俺はある作戦を決行するためにハルヒを解放し背を向けしゃがみ込んだ。 「おんぶだ。乗れ」 「なっ!」 ハルヒは抗議の音を上げるが…そのまま行って階段で転んだりしたら大変じゃねえか。 「いいから乗れ。ケガでもされちゃあ堪らん」 渋々といった感じに、 「わかったわよ…」 と了承し、俺に乗ってくる。 俺はハルヒの太股をしっかり掴み、ハルヒは腕を俺の首に絡ませていた。 背中の柔らかみは…気にしたら負けだと言い聞かせ、でもほんの少しだけ神経を向けながら歩き出す。 ハルヒの部屋に向かう間はお互いに無言だ。少々気恥ずかしい気がしないでもないが、ハルヒと一緒の…この心地良さが好きだ。 ハルヒを下ろし布団に寝かせ、毛布を被せる。疲労感を感じハルヒの横に腰を下ろした。 「…ありがと。あんた、私の良いヤツリストに加えてやっても良いわ」 「…そいつは光栄だね。有り難く加えられるとしよう」 ふんっ素直じゃないんだから…と呟きながらそっぽを向いたハルヒに背を向け自室に戻ろうと立ち上がった時だった。 「待って!」 制止の声と共に手首を掴まれ立ち上がれなかった。 「どうした?寝るまで一緒にいてやるか?」 なんて冗談半分で言ってみたが… 「うん、お願い…」 と肯定されてしまった。 俺は再び座り込みハルヒの顔を眺める格好になったが… 「そう言えばキョンと出会ってそろそろ一年ね」 心中でそうだな、と返答し俺は無言で続きを促した。 「あんたにはすごく助けられたわ」 どことなくハルヒらしくないな、と感じつつ俺はまだ無言でいた。 「わ、わたしね!あ、あんたの事が…」 …ここまで言われるとその後に続く言葉は予想できる。こいつの顔が真っ赤な事も俺の予想を確信へと変えた。 「わ、わたしは!あんたの事が…き、キョンの事が……」 そしてハルヒが最後の言葉を発する為に深呼吸した時、 『ピリリリリッ!』 俺の携帯が鳴り響いた。 「すまないが…その話はまた今度にしてくれないか?」 「あ、うん、別にいいわよ!」 ハルヒもすっかり意気消沈したらしい。心の底から本当にすまない、と感じつつ「また明日な。お休み」と言い残し部屋を出た。 携帯を確認してみるとどうやらメールのようだ。 アドレスは…知らないな。取り敢えず本文を見てみる。 『夜遅くまで婦女子の部屋で2人きりとは感心できませんね。喜緑でした』 とのことだった。 そして左の方で扉を開ける音が聞こえたのでそっちを見てみると… 長門有希が立っていた。「よ、よお長門。眠れないのか?」 「………別に」 そもそも長門や喜緑さんは眠るのだろうか。だとすると見てみたい気もするが… 「んじゃあトイレか?」 「………」 先ほどより俺を射抜く視線が強くなった気がする。女性にトイレの質問をする俺がどうかしてるわけだが… 「そ、それじゃあまた明日な」 「………」 長門は一つ頷くと部屋に戻っていった。あいつは何をしに廊下に出たんだ? END
https://w.atwiki.jp/haruhi_sm/pages/20.html
短編・涼宮ハルヒ 1